老化はさまざまな部位に現れる。始まる年齢は微妙に違うが、いずれも自分自身にサインを出しているのだ。
老化がいちばん目立つのは顔だろう。年より老けて見られる原因は張りとツヤ。肌の老化は20代前半から男性・女性問わず始まっているという。美容師の松本栄子氏が言う。
「男性は30代半ば頃から肌ツヤや弾力性が失われてくる。髭剃りするたびに肌が乾燥したようにカサカサになり、カミソリ負けを起こしやすくなります」
同時に白髪が増え、頭髪も薄くなり始める。色素を作り出す細胞・メラノサイトの働きが鈍ったり、細胞が死んでしまうことが原因だが、40代に入ると、頭髪が薄くなる一方で、鼻毛や眉毛などがバラバラに伸びてくる。鼻毛が飛び出したり、「すだれ眉」になるのだ。
「男性ホルモンの働きの衰えによる毛周期の乱れで、本来は生え変わるはずの体毛が抜け落ちず、成長を止めることもせずに、そのまま伸び続けるためです。また、老化によって皮膚がたるむため、鼻毛が飛び出すことになる」(松本氏)
声も老化で変化する。渡辺院長が言う。
「のどの筋肉の衰えで声帯が弱くなるからで、声帯がきちんと閉じなくなることで誤嚥のもとになる。声帯の老化は、男性の声は高くなり、女性の声は低くなるという特徴があります」
一般的には50代から衰えは始まる。大きく息を吸って、出しやすい声で「あー」と、一息でできるだけ長く声を出してみよう。15秒間、声が続くかどうかが老化の目安だ。
難聴も老化のシンボルだ。一般的に50歳頃から兆候が現れ、65歳を超えると急に増加。60代前半では5~10人に1人、60代後半では3人に1人、70歳以上になると7割以上と言われている。
「原因は内耳の蝸牛にある有毛細胞の障害です。完治の方法は今のところない。通常は両方の耳が聞こえにくくなるのが特徴です」(谷川氏)
嗅覚は20代がピークで、年とともに衰えていき、老年性嗅覚障害は60代以降で見られる。徐々に悪化し、何を食べてもまずく、うつ傾向や認知症原因になることもあるのだ。
体が知らせてくれるサインを読み解くことが必要だ。