投げられない投手が戦力外とならないのであれば、これも不思議な話だが、それが日米通算170勝を誇り、「松坂世代」というブランドを築き上げてきた松坂のパワーなのだろう。
それだけ守られても、引退説が流れる理由は、松坂自身のプライドにある。
「ソフトバンク時代もみずから医者を探して回りましたが、中日でも本人任せにするしかない。ソフトバンク退団直前に巡り合った整体師に、脱臼しかけてポジションがズレていた肩を入れてもらい改善したが、それでも原因はわからなかった。昨年こそ復活しましたが、実はオールスター前に一度、再発の兆しが出るなど、こわごわ1年間を過ごしてきたのが実情です。右肩が期待を裏切ったソフトバンク時代の3年間に逆戻りとなれば、じくじたる思いがあるでしょうが、『今度やったら終わり』が口癖の松坂自身が限界点を最も熟知している」(球界関係者)
もちろん再起を期している現段階では早いが、この1年は松坂がいつ限界を感じて「引退」の決断を下してもおかしくない。
すでに第二の人生プランも固まっているようだ。
「キャンプ中に抜けてまで米国の永住権を取得しに行ったのも、引退後、米国に生活拠点を移すためでしょう。倫世夫人と3人の子供は、学校のオフシーズン以外は米国ボストンで生活している。2人のお嬢さんが米国でフィギュアスケートを習っている関係もあって、監督あるいは監督を前提とした指導者のオファーがないかぎり、引退後は米国での生活を考えているようです」(スポーツライター)
レッドソックス移籍時に総額5200万ドル(約57億円)で6年契約を結び、ソフトバンクとも3年12億円で契約するなど、もうお金は十分に稼いでいる。ソフトバンク時代に裏切ったファンへの恩返しはユニホームこそ変わったが、昨季の6勝、カムバック賞でいちおうの格好がついたかもしれない。
「いや、松坂本人は昨年の成績に満足などしていません。今回の離脱で相当落ち込んでいますね。今季、中6日のローテで回り、チームを牽引するポジションに戻れなければプライドが許さないでしょう」(球界関係者)
再び奇跡の復活に期待したいところだが‥‥。