だが松坂は、その申し出を蹴った。しかも「コーチ兼任などという話はなかった」とまで周囲に漏らして、他球団での現役続行を希望。そのため、3年間で消化試合の1試合1イニングしか投げていない「巨額給料泥棒」をここまで支えてきた王貞治球団会長(77)、孫正義オーナー(60)もアキレ返り、大激怒したという。
「いくら資金に余裕があるソフトバンクといえど、12億円も払って1イニングです。それに対して文句も言わず、また契約延長してやろうというのに、後ろ足で砂をかけての退団。王会長だけでなく、『二度とソフトバンクの敷居をまたがせるな!』と憤慨する球団スタッフまでいます」(球団関係者)
だが、そう簡単に松坂の思惑どおりに、コトが運ぶはずもなかった。
3年前はDeNA、阪神、中日、ソフトバンク、西武、巨人の争奪戦となり、マネーゲームに発展したが、今回は反応がない。楽天の幹部が「育成でよければ」とコメントを残すくらいで、正式なオファーは四国アイランドリーグplusの高知FDだけだった。もちろん実績重視のメジャーからは、3年間ほぼ投げていない投手へのオファーなどあるはずもなく、無給に近い独立リーグにしか可能性は残されていなかった。
松坂がポスティングを使ってレッドソックスに移籍した際、西武には約60億円のポスティング料が入っている。西武はその恩返しの意味も込め、どこもなければ引き取る考えもあったようだが、球団内には「松坂アレルギー」も‥‥。
「3年前の凱旋帰国時に西武もオファーしたんですが、その際の態度があまりにひどく、結局、マネーゲームの材料に使われただけだった。球団幹部の一人は『二度と声はかけん』と、いまだに根に持っています」(西武グループ関係者)
尻に火がついた松坂サイドから阪神、中日の両球団に連絡が入ったのは、11月中旬だったという。しかも年俸は、2000万円プラス出来高の大安売り提示である。
「金本監督にはアメリカ人脈から話が来ています。2000万円ならチームにリスクもなく話題にもなるため、金本監督はなんとかしてやりたいと男気を出して球団に相談を持ちかけたようです」(在阪マスコミ関係者)
野手は「若手を育てる」という起用方針を打ち出しているが、消耗品とも見られる投手に関しては「若手育成」の縛りがない。甲子園で育った松坂が甲子園で復活すればドラマにもなる。球団内で真剣に検討され、坂井信也オーナー(69)にも具申された。
だが結局、観客動員は松坂人気に頼らずとも伸びており、失敗した場合のリスクがあまりにも大きすぎる、との理由で獲得を断念することになったという。もちろん、右肩への疑惑も理由の一つだった。