2月14日、翌日からスタートする代表合宿のために、代表メンバーが宮崎に集結したこの日、野村氏は古巣・ヤクルトのキャンプ地、沖縄・浦添で選手たちを前に講演を行った。
そこで力説したのが、「一球の根拠」。カウントによる打者の有利、不利を考えて、一球一球の勝負にこだわることを説いたのである。
この理論に関して野村氏は、侍ジャパンの主将・阿部慎之助(33)をヤリ玉にあげてこう酷評している。
〈阿部は打撃に関しては天才的と言っていい。しかし、捕手としてはもう一つ物足りない。巨人には優れた投手が揃っているから目立たないだけで、阿部のリードには一球一球に根拠が乏しいように思います〉
巨人番記者が語る。
「野村氏が阿部批判をするのは今に始まったことではありませんが、前大会でやはりリードに苦言を呈された城島が応戦して泥仕合になった経緯があるので、NPB関係者が『挑発に乗るな』と阿部をなだめていますよ」
前出・二宮氏が言う。
「野村さんが厳しいことを言うのは、叱咤激励ですからね。よく人材育成に関して、『無視、称賛、非難』という言葉を使います。三流は無視、二流は称賛、一流は非難するという意味です。あの古田が『ほめられたことがない』と語るように、非難されるのは一流の実力を持つ証しでしょう」
野村氏が猛毒を吐き散らせば散らすほど、球界が盛り上がっている証左でもある。そして、野村氏自身の元気のバロメーターと言えそうだ。
「最近はしゃべる言葉のスピードが遅くなったとか、『何?』と聞き返すなど耳が遠くなったと、老いを指摘する声もありますが、1度寝れば10時間続けて寝ていられるそうで、『寝ろって言われればいつまでも寝られる』と豪語するほど健康体ですよ」(前出・球界関係者)
プロ野球解説者の江本孟紀氏が言う。
「沖縄でも一緒に飯を食いましたが、ちょうどヤクルトの講演前で、『講演やるのが嫌だな。頼まれたからしょうがないけど‥‥』なんて言ってましたが、いつものボヤキだと思いますね。元気ですよ。まあ、野村さんが言うことを深刻にとらえないほうがいい。だってWBCの監督批判をしたからって、監督の采配で決まる試合なんてシーズンでも数えるほどしかないんですからね」
野村氏の毒ガスが次に発射されるのはいつか。