機知に富んだキレ味抜群の物言いでファンをうならせている球界随一の論客が、みずからの言動に足をすくわれた。テレビ番組でうっかり「本音」を漏らしたがために、出演する大人気CMが打ち切られるという「ペナルティ」を科されてしまったのだ。コトの顛末を全て明かす。
「最高6億円くじ、当たりませんよ、そんなもん。夢も希望もないでしょ」
おなじみのボヤキ節で登場し、高田純次扮する「6億円BIGマン」と対峙。結局、BIGマンから6億ビームを浴びて風船のように体が膨らみ、「ホームラーン!」と叫びながら空へと飛んでいく──。
ちまたで話題のCM「6億円BIG」で「ボヤいてばっかりマン」を演じた野村克也氏(77)。あのボヤキキャラをそのまま利用した出色の作品だった。
「だった」というのは、2月21日から放送されたばかりのこのCMが3月6日を最後に突然、打ち切られたからだ。スポーツ紙デスクが、野村氏に代わってこうボヤく。
「3月7日発売の紙面には、ノムさんとBIGマンのCMが絶賛放送中という趣旨の原稿、つまり記事広告が入るはずでした。ところが6日夜になって広告代理店が慌てて『差し替えてほしい』と要請してきたのです。いくら広告といっても、すでに出稿は終わっていて受けられないと言うと、それでも差し替えろと強く要求してくる。そこまでする理由は何なのかと聞いてみると、代理店は『野村さんが暴力を容認する発言をした。東京五輪招致を目指している時にこれはまずい』と説明しました」
野村氏の「発言」とは、レギュラー出演している3月3日のスポーツ情報番組「S☆1」(TBS系)でのものだった。折しもこの日、高校野球の名門・PL学園が、硬式野球部内の暴力を理由に春季大阪大会を辞退したことが明らかになったばかり。少し前には女子柔道日本代表の体罰騒動が監督解任に発展するなど大きな社会問題となったこともあり、MCの爆笑問題・田中裕二が体罰についてどう思うかと水を向けた。すると野村氏は、
「賛成どころか大賛成」
驚いた田中が「桑田(真澄)さんは反対ですけど‥‥」と切り返すも、
「体罰があってこそ強くなる。アマチュアの試合は特に必要だ。口で言ってわからなければしょうがないでしょう」
と持論を述べたのだ。
BIGは独立行政法人「日本スポーツ振興センター」が発売するサッカーくじであり、同振興センターは地方公共団体のスポーツ活動やスポーツ施設整備、あるいは五輪などの国際競技大会開催を助成している。そんな機関のCMに出演する野村氏が、体罰を容認どころか推進する発言をしたのはいかにも問題があったということなのである。
「スポーツを振興する立場として、五輪誘致にも影響を与えるから、と焦ったんですよ。IOCの評価委員が来日しているというタイミングも悪かったんでしょう」(テレビ局スタッフ)
結局、「ボヤいてばっかりマン」と差し替わった広告は、具志堅用高がボクシンググローブをはめて登場する「よけるマン」編が3月7日から放送される、との内容だった。