今年の夏の大会、3回戦の盛岡大付(岩手)対済美(愛媛)戦は史上初の1試合2本の満塁ホームランが飛び出す歴史的な空中戦の末12‐7で盛岡大付が打ち勝った。これが夏の決勝戦での満塁ホームランとなると、過去3度飛び出しているが、実はそのうちの2本は佐賀県勢が打ったものである(残りの1本は08年第90回大会の大阪桐蔭)。
中でも2本目は熱心な高校野球ファンでなくとも言われれば思い出すのではないだろうか。07年、第89回大会の佐賀北である。8回表まで広陵(広島)に0‐4とリードされていたが、その裏に広陵のエース・野村祐輔(広島東洋)を捉えて1アウトから連打が続くとそこから連続四球で1点を返し1‐4。ここで打席に入った3番の副島博史が劇的な逆転満塁ホームラン。5‐4で劇的初優勝を飾ったのだ。
その歓喜からさかのぼること13年。94年第76回大会で佐賀県勢として夏の甲子園初優勝を飾ったのが佐賀商だった。決勝戦は優勝候補の樟南(鹿児島)との対戦。試合前は「佐賀商苦戦」が伝えられたが、試合はがっぷりよつの展開となり、8回を終わって4‐4と互角の展開となっていた。そして迎えた9回表。佐賀商の攻撃は2アウト満塁と絶好の勝ち越しのチャンスを迎えていた。ここで打席に入った2番・キャプテンの西原正勝がレフトスタンドへ劇的な決勝満塁弾。8‐4で樟南(鹿児島)をくだし、佐賀県へ初の深紅の大優勝旗をもたらしたのだった。
過去2度しかない佐賀県勢の夏の甲子園優勝の決勝点はいずれも満塁ホームランだったというのは奇妙な一致と言うしかないのだが、実はこの両校、いずれも開会式直後の開幕試合に登場した点でも一致している。つまり今後、佐賀県勢のチームが夏の甲子園の開幕試合に登場し、そのまま勝ち進んで決勝戦に進出した場合、満塁ホームランで優勝する!? そんなバカなと思われる人もいるだろうが、“2度あることは3度ある”とも言う。佐賀県勢のこの法則、ぜひとも覚えておいていただきたい。
(高校野球評論家・上杉純也)=敬称略=