──ダハハハハ! しかし加勢大周さんの学生時代のあだ名がラオウだったりとか、窪塚洋介さんのお祖母ちゃんが病気で入院してた時に、励ますためにラオウの人形のお腹にメッセージを書いて渡したとか、意外なところに影響を与えた作品でもありましたよね。
武論尊 本人は実感がそんなにないんですよ。ただ数字には出てますからね。いま完全に「北斗の拳」で食べてますから胸張って「いい作品です」って言ってもいいんでしょうけど、なんか恥ずかしいんですよ。
──ラオウ以降の展開を本人がほぼ覚えてなかったりもするぐらいだし(笑)。
武論尊 記憶から消しましたね。照れと恥ずかしさと、俺は書かされてるんだってどっかで自己弁護してるからなんでしょうね。
──本宮ひろ志先生が「男一匹ガキ大将」を自分の意志で終わらせるはずだったのに、「ジャンプ」の意向で連載を続行させられたから、その先の展開を文庫版には入れなくなったこともあったじゃないですか。
武論尊 ああ、たぶんそれと一緒。本宮の中では万吉は富士の裾野で終わってるし、その続きについては、やっぱり描かされたって思ってるはずなんですよ。これは作り手の側のワガママなんですけど。ただ、どっかで頂点を書いちゃったら、ホントはやめたいんだけど、あとは緩やかに降りるだろうなっていうソフトランディングは考えなきゃいけないし、でもそれをどっかで潔しとしない自分もいるわけですよ。だからやっぱりどこかで書かされてるっていう言い訳をして逃げてるんでしょうね。
──ちゃんと連載を続けるのであれば、1カ月ぐらい休載して今後の展開を練っておくべきですもんね。
武論尊 そうでしょ? だから1週間でよく書いたなと思いますよ。何年後かの話をいきなり書くわけで、堀江君が何かアイデアくれたわけじゃないからね。
──「休載なしです、はい続き書いてください」で。
武論尊 だから、そのあとの話はホントに覚えてなくて。でも、こないだ改めて読んだら意外とよくできててビックリしたんですよ。「俺こんなの書いてたんだめっちゃおもしろいじゃん!」と思って(笑)。
──ダハハハハ! いったんテンションが途切れた人間が書いたとは思えない。
武論尊 思えない! 武論尊たいしたもんだなって。
プロインタビュアー 吉田豪