「おい、ちゃんとウケてたか? 俺の耳が悪いのかな? なんか客のカエリ(笑い声)が小さいような気がしてよ。だから心配になって、巻き返そうとジャンジャンしゃべっちまったけど、大丈夫だったか?」
8月26日に開催された、「ビートたけし“ほぼ”単独ライブ第8弾! in名古屋」にて、約1時間50分程のステージを終え楽屋に戻ってきた殿は、開口一番、冒頭の感想をこちらに投げかけてきたのです。
もちろんですが、はっきりと大きな笑いの繰り返しという1時間50分であったため、殿の横で舞台に立っていたわたくしが、何のてらいもなく「普通にウケてましたよ。ただキャパ3000人の会場ですから、1階席と3階席で、笑いの時間差がありましたので、一気にドカンとはいかない感じでしたが、とにかくガンガン、ウケてました」と、舞台上で感じた感触をそのままお伝えすると、
「そうか? だったらいいけどよ、なんか会場が大きくなると、カエリが聞こえにくくて、やってて心配になるんだよな‥‥」
と、続けたのです。
しかし、ほとんど宣伝もせず、キャパ3000人の会場が、発売と同時にすぐさまソールドアウトになるのですから、“殿を生で見たい”と切に願う方々の多さと熱狂ぶりには、本当に驚くばかりです。
しつこいようですが、歌や芝居でなく、純粋にお笑いだけのライブで、3000人の会場を満員にするのですから、改めて驚愕いたします。
で、この日の殿は、半年ぶりのライブという、テンションの上がる状況がそうさせたのか、16時に会場入りすると、開演となる19時までの3時間、楽屋にごあいさつにやってくる知人や友人を相手に、休みなくしゃべり倒し、そして迎えた本番でも、圧巻のしゃべりまくりで、22時から始まった打ち上げでも、居並ぶスタッフや関係者各位に向け、サービス精神満載のトークを、約2時間半、惜しげもなく炸裂させていました。今回で8回目となる単独ライブですが、殿は毎回、とにかく、ずーっとしゃべっています。そんな殿を見ていると〈怪物はいつだって怪物である〉と、ライブのたびに再確認するわたくしなのです。で、名古屋の地で変わらずの横綱相撲ぶりを見せつけた殿は、打ち上げの終了間近、
「やっぱりな、客との“間”とか忘れちまうから、大変でもライブはやっておかないとダメなんだよな」
と、しみじみ“浅草の板の上(舞台)出身芸人”らしい持論を述べると、
「北郷、あれだな。ライブの○○○コーナーよ、ちょっとやり方変えるか? な? よし、東京帰ったらさっそく作戦会議だ!」
と、最後は大変明るく指示を出し、宿泊しているホテルへと帰っていったのでした。テレビのレギュラーを週5本抱え、本を年間3冊以上出版し、映画を2年に1本のペースで撮り、そして、地方でお笑いライブもやる72歳。くどいようですが、怪物です。
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◆プロフィール アル北郷(ある・きたごう) 95年、ビートたけしに弟子入り。08年、「アキレスと亀」にて「東スポ映画大賞新人賞」受賞。現在、TBS系「新・情報7daysニュースキャスター」ブレーンなど多方面で活躍中。本連載の単行本「たけし金言集~あるいは資料として現代北野武秘語録」も絶賛発売中!