「俺の耳が悪いのかな? 途中、客の笑い声があんまり聞こえなくてよ。これはまずいと思って焦ったよ」
9月5日、豊洲にて開催された「ビートたけし“ほぼ単独ライブ”第四弾」で“怒とうの2時間おしゃべりライブ”を終えた殿はすぐさま、“ライブの出来”について心配を口にしたのです。ちなみに、3年程前から年1回のペースで、派手な宣伝もせず、ある意味、ゲリラ的に開催されている殿の単独ライブですが、今回は過去最高のキャパ、1300席を誇る会場での開催となりました。ちなみに、普通のライブはどこの会場も“男子トイレはさほど混まず、女子トイレが激混み”なのが常識なのですが、たけし単独ライブでは毎回、女子より男子トイレが圧倒的に混み合います。どれほど“男だらけ”なライブなのでしょう。
で、ライブのウケは実際のところはどうだったの?
ハイ。毎回、殿のライブでは幸運にも進行とツッコミを務めさせていただいている、“同じ舞台で客のウケを体感している”わたくしに言わせてもらえば、お世辞でも何でもなく、今回も殿は普通にウケていました。では、なぜに殿は「心配発言」を?
ハイ。これは殿の求める笑いの質にその理由があります。殿はそれこそ3分に1回はドカンと爆笑をとらないと気が済まないタチであり、感覚的には、漫才ブームの頃のあの“恐ろしく速い漫才”の時の笑いを求めています。が、たけし単独ライブは、殿が作成したいたずら描きパネルをスクリーンに映し、それをもとに座ってトークを展開していくスライドショーです。映しだすパネルにより、笑いの巻き起こり方は当然ながら様々です。いきなりドカンと来るもの、じわじわ来るもの、説明していく段階でクスクス笑いが起こるもの‥‥。ですから、殿が求めている“毎回常にドカン”とは、さすがにならないわけで、その“ズレ”が、殿を心配にさせた要因ではないかと。あと、もうこれは殿の性格だと思うのです。過去の単独ライブで死ぬほどウケていても、やはりライブ後は、まずはネガティブ発言をくり返していましたから。
そんな殿は、打ち上げの場でも、翌日の仕事が早いことから、ノンアルコールビールで乾杯を済ますと、
「途中よ、客が冷えだしたから、『これは後で悪評とどろくな~』って思って焦ったよ」
と、やはり心配を続けたのです。が、周りからの“そんなことはなく、ちゃんとウケてましたよ”的な声を耳にすると、「そうか? ホントか?」と、一度は疑いながらも、最後には、「じゃーとりあえずは成功か?」と、しっかり前向きな発言を炸裂させたのです。
そして、「明日はCMとタックル(『TVタックル』収録)があるから、先に帰るわ」と打ち上げを少し早めに切り上げ、日付の変わる20分程前、殿は帰っていかれたのでした。追伸。ライブから2日後。殿はベネチア映画祭へと参加するべく、日本を飛び立ちました。
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◆プロフィール アル北郷(ある・きたごう) 95年、ビートたけしに弟子入り。08年、「アキレスと亀」にて「東スポ映画大賞新人賞」受賞。現在、TBS系「新・情報7daysニュースキャスター」ブレーンなど多方面で活躍中。本連載の単行本「たけし金言集~あるいは資料として現代北野武秘語録」も絶賛発売中!