1月初旬、20時すぎ。某テレビ局の楽屋前にて、今年初めて殿にお会いするため、到着を待っていました。待つこと30分。時間どおりに、上はカシミアのグレーのセーター、下はデニムというカジュアルないでたちで、やや猫背がちにデニムの前ポケットに両手を入れ、ガニ股シルエットで現れた殿に、早々、「殿、明けましておめでとうございます。今年も──」と、決まりきったご挨拶をぶつけると、殿はこちらが言い終わらないうち、食いぎみに、
「ライブのネタだけどよ、スクリーンにサラリーマンの写真とか、飲み屋のオヤジとか、あと、○○○さん(カツラ装着疑惑タレント)とか、○○○さん(カツラ乗せてる疑惑タレント)の写真をジャンジャン出してよ、誰がカツラかどうか判定するゲームやりてーんだよな」
と、今年初めてお会いして、わずか1秒で、目前の1月15日に迫った「ビートたけし“ほぼ”単独ライブ」での、大変バカバカしいゲーム案を放り込んできたのです。
しかし、2018年一発目の師匠との会話が“カツラ絡み”とは‥‥。
で、その後も殿はやたらテンションが高く、
「だったらアレだな。客を舞台に上げてよ、赤白の旗持たせて、スクリーンにジャンジャン、カツラ臭いサラリーマンとか、○○さんとか、○○○さんの写真をダーッと出して、カツラだったら赤旗上げて、違ったら白旗上げる、カツラ判定ゲームにしちまうか!」
と、まさかの「お客様参加型カツラゲーム」案を、実にうれしそうに、ニヤニヤしながら、さらに放り込んできたのです。
その後も、“ゾーン”に入ってしまった殿は、ここで書くのもはばかれるほど“大変毒っ気の強い”過激なゲーム案を一つ提案してきたのです。が、“いくらライブとはいえ、さすがにそれは無理!”と判断したため、聞こえないふりをして、あまりリアクションを取らず、やんわりとスルーいたしました。はい。
とにかく、この日の殿は、正月休み明けで休養が十分だったのか、やたらめったら元気であり、次から次へとライブでやりたいネタを出しまくるのです。
「あれだな。捕まったタレント判定ゲームってのもできるな!」
「あとよ、男の子大好き芸能人ゲームってのもあるな!」
などなど、続々と提案し続けていました。
そして、ひと通りアイデアを出しきると、「打ち上げはどこでやるんだよ?」と、ライブ前恒例の質問があり、「はい、中野の○○○です」と、すでに決まっている店名をお伝えすると、
「どこでもいいけどよ、焼酎だけ用意してくれればいいよ。何の肉だかわかんねー、怪しい焼き鳥屋でもいいからよ、とりあえず焼酎だけ頼むな。うん」
と、“今どきそんな店ありませんよ!”とツッコミたくなる店をリクエストしては、一人勝手に納得する、今年、仕事初めの殿なのでした。
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◆プロフィール アル北郷(ある・きたごう) 95年、ビートたけしに弟子入り。08年、「アキレスと亀」にて「東スポ映画大賞新人賞」受賞。現在、TBS系「新・情報7daysニュースキャスター」ブレーンなど多方面で活躍中。本連載の単行本「たけし金言集~あるいは資料として現代北野武秘語録」も絶賛発売中!