羽生結弦が自身にプレッシャーを掛けていた。
過去一度も優勝したことのないグランプリシリーズ・カナダ大会を征したのは既報通りだが、羽生がそれ以上に苦手意識を持っている大会があった。次のNHK杯(11月22日開幕)だ。
「過去2年、羽生はNHK杯に出ておりません。一昨年は直前の公開練習で右足首を故障してしまいました。去年も足首を痛め、欠場となりました」(体育協会詰め記者)
直前でのケガ、それが「NHK杯は鬼門」と捉えられるようになった理由だ。
「“自分のベストな演技ができるように”と、羽生はNHK杯に向け、コメントを出しています。確かに、羽生は2年連続しての直前のケガに泣いていますから、相性が悪いのかな?と思ってしまいますね」(前出・体協詰め記者)
過去2年の欠場理由を知ると、「ベストな演技を」のコメントは奥深い。「上書きしたい」とも語っていたが、それは16年の同大会で優勝した時だけではなく、ケガで苦しんだ過去2年を「消してしまいたい」の意味も込められているのだろう。
「今までの羽生は、コーチが練習のしすぎを止めようとしても、言うことを聞きませんでした。でも、最近では『今日は飛ぶな』とジャンプ練習を制限すると、素直に従うようになりました」(テレビ局スポーツ担当)
もっとも、これだけ意識しているのだから、負けた時はヤバイことになるかもしれない。カナダ大会では「優勝する」と自分にプレッシャーをかけ、それを実現させた。NHK杯も同様の作戦で臨むつもりでいるが、それで敗れた場合、その敗戦を引きずる危険性もある。勝たなければならないのだ。流行りのフレーズではないが、羽生も「NHK」のジンクスを「ぶっ壊す」の心境だろう。
(スポーツライター・飯山満)