現サラリーマンの8割がアルバイト化し、困窮地獄に叩き落とされる魔の政策。そしてこの有力議員は、さらに恐ろしい内容を口にするのだ。
「クビ切りした労働者を再雇用した企業には補助金という餌を与えようとの案もあります。ただし、その補助金も2年間なら2年間という期限を設定し、補助金が切れたら捨てるように、また解雇する。そこに来年4月からの消費増税がズッシリとのしかかる。準社員はまさに地獄ですよ」
冗談ではなく自殺者が続出しそうな現実が迫るが、この限定正社員法案に限らず、産業競争力会議や規制改革会議では、クビ切りと転職をこれでもかと促す、とんでもない法案が次から次へと議論の俎上に載せられているのだ。主だったところだけをあげてみても、
●一定以上の雇用期間があれば解雇できる法案
●雇用を維持するための助成金を廃止する法案
●派遣労働規制を緩和して派遣社員を増やす法案
●有料職業紹介事業者への規制を緩和する法案
などなど、一事が万事、こんな調子なのである。
「今は自由な働き方をしたいと思っている人がたくさんいるんですよ」
野党議員から国会で追及を受けた際、安倍総理はこう言って体をかわしてみせた。ならば自由な働き方に的をしぼった制度整備をすればいいはずだが、実際にはお荷物の過剰労働力を川下に流すがごときプランのオンパレードである。
こうした悪夢の「成長戦略」は夏前にもまとめられる予定だが、それが実行に移されていくのは7月の参院選が終わってから。
「そこを参院選前に国民に悟られないよう、安倍総理は神経をとがらせているわけです」(官邸関係者)
アベノミクスとは真逆のこのダメノミクスは政治日程もニラみつつ、実に狡猾に練られているわけなのだ。
安倍総理は2%の物価目標を掲げている。いわゆるインフレターゲットだが、これは今後の日本経済が2%の名目成長を遂げていくことを意味し、これに伴って経済の全体状況を映し出す株価も基本的には上昇していく。要するに、青息吐息の準社員を尻目に、快哉を叫ぶのは経済界と投資家という構図である。
その結果、近未来の「瑞穂の国」に出現するのは、経済そのものは米国や中国に伍して絶好調ながら、ほんの一握りの勝ち組と、その他大勢の負け組とに二極分化した、何とも残酷な社会。当然その時には、日本の繁栄のシンボルだった分厚い中間層は準社員化によって跡形もなく消え去っている。
安倍総理は「誰にでもチャンスのある社会」「再チャレンジ可能な社会」を口にするが、これは機会の平等を保証しているだけで、結果の平等を保証しているわけではない。政治の一大使命である富の再分配は市場に任せ、消費税だけはきっちり増税させてもらうというのでは、国民からダメノミクスと指弾されるのは自明の理である。