3年ぶりに新作「色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年」(文藝春秋)を発表した作家・村上春樹氏(64)。発売わずか1週間で100万部超えのバカ売れ状態だが、これに爆笑問題・太田光(47)がかみついた。
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以前から村上氏について、たびたび口撃を続けていた太田だが、4月30日放送のラジオ番組「爆笑問題カーボーイ」(TBSラジオ)で、この空前の大ベストセラーに対して、またもや猛烈なバッシングを繰り広げたのだ。
「村上春樹がなぜつまらないかわかった。俺に言わせれば、人間を描けてないってことなんだよね。登場人物が自分だけが特別だって意識の人たちで、涼しげに思わせぶりなことを言うだけでちっとも感情的じゃない。それと翻訳みたいな言葉ばかりで、そんな会話しているやつなんかいねぇだろって! 大事な根幹の部分を飛ばしちゃって涼しいままで終わっているから、ふざけんじゃねえよって感じなんだよ。やっぱり村上春樹は認められない。俺みたいな野良犬がキャンキャンほえたって何も影響ないから言うんだけど」
ノーベル文学賞に最も近い作家をこうクソミソに酷評したのだ。ネットでは「ハルキスト」たちが賛否両論の意見をぶつけ合っているが、ベテランの文芸編集者が言う。
「文芸作家として村上春樹氏が評価されたのはデビュー作『風の歌を聴け』において、セックスと死をテーマとする小説を批判したことでした。それらは明治以降の近代文学で必須として描かれたテーマで、村上氏はそうした歴史を全否定するところから出発し、その試みと姿勢が高く評価されたのです。しかし、初期の『羊三部作』でその試みは終わりました」
もともと初期作品のファンだったという太田だが、それだけに最近の作品については裏切られたという思いがあるのだろうか。
文芸評論家の永江朗氏が「太田の意見も一理ある」としながら、こう解説する。
「私も新刊が出た瞬間に100万部売れなくても‥‥という印象です。初期の作品は大好きですが、『ノルウェイの森』から変わったなと思っています。10万部で終わっていた人が100万部という別のステージに行ったということなんでしょう。『羊三部作』が好きだったファンには裏切りに映るのかもしれませんが、逆に声の届く範囲が広がったとも言える。海外に拠点を移して以降は、文章が日本人読者だけを対象にしていないという印象も受けますね。描写も翻訳を前提にしているような書き方になった気がします」
もはや世界を相手に作品を発表する村上氏に対し、
「中身がゼロ」
「あんなの小説じゃねぇ、誰でも書けるよ!」
と舌鋒が止まらない太田だが、自身も小説を発表したこともあるだけに批評よりも作品で勝負を挑んではどうだろうか。