「成長戦略」という「アベノミクス」の“第三の矢”は、会社員に放たれた“毒矢”なのか──。「世界で勝つ!」と総理が連呼する一方で、日本を代表するグローバルカンパニーには“ブラック企業”の評判も付きまとう。サラリーマンが“奴隷”のごとく使い捨てられる暗黒な時代はまっぴらゴメンなのだ。
「『世界で勝って、家計も潤う』。アベノミクスも、いよいよ本丸です」
5月17日、安倍晋三総理(58)は「第三の矢」と呼ぶ「成長戦略」第2弾を、冒頭のようなセリフとともに明かした。その内容は「農家の所得倍増」「集中投資促進期間」などであった。そのどれもが世界から優秀な人材と金を集め、高品質の“メイド・イン・ジャパン”を世界に売リ込むという思考が貫かれている。
巷間、話題の「グローバル化」というヤツだ。そして、6月にも発表される「成長戦略」第3弾では、この方向性がより加速化することが予想される。
我々のような平凡なサラリーマンは、「金髪美女に英語でも教わろうか」とお気楽に構えていたのだが‥‥。
「『グローバルカンパニー』『多国籍企業』と呼ばれている企業が、日本経済のためになったことがあるのでしょうか。安い労働力を使い、高収益を上げるべく、若者をはじめとする多くの日本人が非正規雇用という劣悪な労働環境に押しやられている。日本を代表する企業などではなく、『無国籍企業』と呼んだほうがいいくらいです!」
ただならぬ雰囲気で、本誌の取材に答えるのは、日本共産党の山下芳生参院議員だ。若者の雇用問題を追及してきた山下氏は、非正規雇用を拡大してきた歴代政府に厳しいことで知られる。その山下氏は先頃、国会で日本を代表するグローバルカンパニーを“ブラック企業”と名指しし、批判したのだ。
5月14日の参院予算委員会で質問に立った山下氏は朝日新聞の記事を引用しながら、こう切り出した。
「ユニクロでは新卒社員が入社3年以内に退職する割合が5割を超え、休職中の社員の42%がうつ病などの精神疾患に‥‥」
今やブラック企業とはヤクザのフロント企業を指す言葉ではなくなっている。大量に正社員を採用し、過酷なノルマなどを課して、新入社員を選別。その選別の過程でかかる重圧から体を壊す者も少なくない。つまり、「非正規雇用の枠には収まりたくない。何とか正社員に」という人間心理を利用し、次々と人間を使い捨てにする“強欲”企業を指すのである。
そして、山下氏は質問時間の終盤で、安倍総理に詰め寄ったのだ。
「アベノミクスはブラック企業の根絶どころか、ますます拡大することは明らかではないですか」
アベノミクスが指し示す企業のグローバル化は、ブラック企業の温床になる。ならば、会社員の未来は「家計が潤う」どころか、使い捨てにされるだけ‥‥。アベノミクスは、お先真っ暗な未来を指し示しているのだろうか。