もう一つ、授賞式で気になったのは、ミスターの受賞の挨拶だった。
「国民栄誉賞をいただきまして、本当にありがとうございます。松井君も一緒にもらったとあって、非常に××××××こと、ありがたく御礼を申し上げます。ありがとうございます。ファンの皆様、本当にありがとうございます。よろしくお願いしまーす」
巨人担当記者が言う。
「途中、よく聞き取れない個所がありましたよね。でもふだんのミスターはあんなに口がもつれることはない。知り合いの記者たちのブラ下がり取材では『おぉ、元気か!』とスムーズに言葉が出ます。でも、ああいう公の大舞台では『長嶋茂雄』を演じようとするから極度に緊張して焦り、力んでしまう。『よろしくお願いしまーす』というのは松井のことなのか今後の自分のことなのか」
もともと、受賞挨拶のための「原稿」が用意されていたのだという。巨人担当記者が続ける。
「あの挨拶が原稿どおりだったはずはありません。グラウンドで授与式を待っている間、何かブツブツ言うように盛んに口を動かしていましたが、恐らくセリフの練習だったのでは。しかし本番では緊張のあまり、予定していた文言が頭から飛んでしまったのでしょう。始球式を終えて一塁側のベンチ脇から引き揚げる際も、専属広報担当者に肩を支えられて階段を降りていましたが、ふだんはあんなことはない。これも緊張の証しでしょうね」
さて、一方の松井氏はどうだったのか。先の巨人担当記者は、
「気になったのは、(始球式で捕手役だった)原辰徳監督(54)との微妙な関係。投球後、ミスターに歩み寄る松井氏に握手を求めてきた原監督に一瞬応じた以外は、目も合わせなかったように見えた。原監督が捕ったボールを松井氏に持っていこうとしたら、松井氏はまったく反応しない。そこでミスターに渡そうとしても左手にはバットを持っているし、いらないというしぐさ。そこで安倍総理に渡しました。松井氏は球場で監督室に挨拶に行くぐらいはしたでしょうが、ほとんど話らしい話はしていない。SPがいたこともありますが」
両者の冷めた空気の理由を、前出・デスクは次のように説明する。
「原監督にしても、自分が今、監督をしているのに(渡辺恒雄球団会長のラブコールで)来年にも松井氏が監督に、などという報道を連発されたら、そりゃおもしろくないでしょう。しかも監督就任1年目の02年オフ、松井氏は残留要請を断ってヤンキースにFA移籍していった。その翌年、原監督は選手に『メジャーの試合は見ないように』とメジャー中継視聴禁止令を出しました。同時に『松井の話はするな』とのお達しも出していたほどですから」
両者の間にはまだ、わだかまりという壁が存在しているのだろう。