プロ野球界と国民栄誉賞といえば、過去に2度にわたって受賞を打診され、いずれも辞退した経験のあるヤンキースのイチロー(39)の名前が浮かぶ。だが、松井氏の受賞を受けて黒田博樹(38)や上原浩治(38)らが祝福コメントを出す中、イチローは沈黙を保ったままだった。イチローにとって松井氏は、打撃スタイルやメディア対応、WBC出場などを巡って「相いれない関係」とされてきた「天敵」だけに、原監督同様のわだかまりが障害となったのか‥‥。
メジャーを取材するジャーナリストが明かす。
「今年4月、イチローが全ての日本メディアに対応したのは1日だけしかなく、基本的には昵懇の仲の通信社の記者による代表取材しか受け入れていません。米メディアなら誰が取材に行っても答えるんですけどね。その通信社記者による代表質問では、イチローに気を遣って、国民栄誉賞関連の質問はしていないからです。イチローが嫌がりそうなことは気を利かせて聞かないようにしているんですよ。まぁ、うっかり質問して、もし答えたとして、それで騒動が起きるとマズイですからねぇ‥‥」
米メディア関係者も苦笑する。
「確かにそれがきっかけでいろいろマスコミに書かれるんじゃないかとの懸念があったようですね。ミスターや松井氏が喜んでいるのに水を差す事態になりかねない、と」
注目されるのは、7月下旬に開催されるとの噂がある、ヤンキースタジアムでの「松井引退セレモニー」。ここでイチローがどう反応するのかだという。
ヤンキースでは今年、「レジェンド・シリーズ」と題して、ヨギ・ベラ、マリアーノ・リベラ、デレク・ジーター、そして松井氏というヤンキースを代表する新旧の名選手4人をたたえる日がそれぞれ設けられる。
「7月に予定される松井氏の日には、松井氏の首振り人形が観客に配られるため、本人がゲストとして出場するのではないかとの報道が現地ではなされています。そこで松井氏に何かをしゃべらせるのかどうか。相まみえたイチローが花束でも渡すとすれば大したものですが‥‥まぁ、そんなことはやらないでしょうね」(前出・ジャーナリスト)
はたしてイチローの心境はどんなものか。そしてあの始球式、ミスターの片手スイングにどんな思いを抱いたのか。ミスターの右手ではないが、よけいな言動はポケットにしまっておいたほうが得策なのだろう、きっと。