キャンプインまで2週間を切り、原辰徳監督率いる巨人も選手の一軍、二軍の振り分けを発表した。ファンもビックリだったのが、育成(選手)ドラフト1位・平間隼人内野手の一軍スタートだ。「だったら、育成ではなく、支配下(登録選手)で指名すれば良かったのに」なんて声も聞かれたが、ライバル・阪神からは「やっぱり来たか…」と、意外な反応も聞かれた。
「阪神二軍の首脳陣、スタッフは平間の名前を覚えていますよ。彼が強烈な印象を残したと言ってもいいでしょう」(在阪記者)
昨年9月12日、阪神二軍は平間の在籍していた四国独立リーグ・徳島との練習試合を鳴尾浜球場で行っている。その時、阪神の先発マウンドに上ったのが、右肩の故障から復活を目指すランディ・メッセンジャーだった。試合は阪神二軍がレベルの違いを見せつけて大勝したが(10対4)、メッセンジャーは5回4失点6四球でピリッとしなかった。
「平間はメッセンジャーからライトオーバーの三塁打を放っています。みごとな一撃でしたが、『足』で三塁打にしたんですよ」(前出・在阪記者)
その時のスピード感あふれる走塁は、平田勝男・二軍監督も認めていたという。マウンドのメッセンジャーもそのスピードに驚いたのか、その後のマウンドはイライラの連続だった。ネット裏には巨人以外のスカウトもいたそうだ。家庭の事情でいったん野球を離れたという異色の経歴ばかりが注目されている平間だが、他球団も指名リストには入れていた逸材だったのだ。
奇しくも、翌13日、メッセンジャーは球団を介して「現役引退」を表明している。平間の三塁打が、在籍10年、NPB通算98勝の優良外国人投手に引導を渡したようなものだ。
「選手の振り分けを決めるスタッフ会議では、メッセンジャーから三塁打を放った映像が流されたそうです。原辰徳監督は即決でした」(チーム関係者)
育成ドラフトの新人が一軍スタートとなるのは、球団史上初。この平間が支配下を勝ち取り、甲子園球場のバッターボックスに立つ時が来たら、阪神二軍の首脳陣はメッセンジャーのことを思い出すだろう。伝統の一戦をふたたび盛り上げるには“因縁の対決”も必要だ。平間がキーマンになってくれそうだ。
(スポーツライター・飯山満)