新型コロナウイルスへの感染が広がるクルーズ船の「ダイヤモンド・プリンセス号」から、各国の乗客がチャーター便で脱出している。羽田空港に貨物機を送り込んだアメリカを皮切りに、これまで韓国、香港、台湾、カナダ、オーストラリア、イスラエル、ポルトガルがチャーター機を手配。帰国後にはどの国でも14日間の隔離、防疫措置が行われているが、細かい点ではいろいろと違いがあるようだ。
「注目はチャーター便のチョイス。オーストラリアではカンタス航空、香港はキャセイパシフィック航空、そして台湾はチャイナエアラインと一般の航空会社を使いました。台湾では避難民が19人と少なかったことから小型機のB737を飛ばしましたが、一列に一人だけを座らせ、食事はおろかトイレにも行けないなど徹底した隔離措置を取っていたそうです。その一方でカナダとポルトガル、そしてイスラエルは主にチャーター便を運航する国外のエアラインに発注。意外だったのは韓国で、空軍所属の輸送機『CN-235』を飛来させました。羽田空港で各国のチャーター便を待ち受けていたエアラインマニアも、よもやプロペラ機が飛んでくるとは思ってもみなかったことでしょう」(飛行機事情に詳しいトラベルライター)
それらのチャーター機で帰国した人たちはどんな施設に隔離されているのか。アメリカでは軍の施設を利用していたが、意外にも他の国ではそういった例はないという。
「カナダのチャーター便はオンタリオ州のトレントン基地に着陸するも、避難民はそこから280キロも離れた『ナブセンター』という大型カンファレンス施設に収容。宿泊や食事の提供を考えると軍の施設では対応できないのかもしれません。オーストラリアでは、武漢市からの避難民はインド洋に浮かぶクリスマス島に隔離したのに対し、今回はオーストラリア北部・ダーウィン市の近郊にあるハワードスプリングスという田舎町の施設に収容。その周りは見渡す限りのアウトバック(荒野)で、一般市民からの隔離にはここで十分との判断でしょうね」(前出・トラベルライター)
その一方で、人口密集地の施設に隔離するケースもあるというのだ。
「香港では沙田区のニュータウンに新しく建設された高層マンションの『駿洋邨』を臨時の隔離所にあつらえたようです。ただしここは主要道路から山中に向かう一本道の先にあるので、狭い香港の中ではまだ人里離れたところかもしれません。そしてイスラエルでは、テルアビブ市内にある国内最大の医療施設に収容。常に戦争と隣り合わせの国ゆえ、感染を防ぐ施設などが充実している可能性もあります。台湾では施設の詳細は発表されていませんが、空港からは一人につき1台の救急車というVIP待遇。移送手段での感染拡大を徹底的に防ぐ構えのようです」(前出・トラベルライター)
ネット民からは「他国は14日間の隔離、日本は寿司屋に直行」との皮肉も出ているが、はたして感染拡大を止めることはできるのだろうか。
(金田麻有)