新型コロナウイルスについて報じる情報番組に<やりすぎだ!>との声も上がる中、アメリカのテレビ局はもっと「ヤバかった」ようだ。船内で感染者が発生したクルーズ船のグランド・プリンセス号を巡り、地元のテレビ局が10時間超にも及ぶ生放送を実施したのである。
グランド・プリンセス号はサンフランシスコ沖で待機したのち、乗客全員を検疫するため、現地時間の3月9日にオークランド・アウター港に入港。桟橋には検疫用の特設テントが設置され、乗客を運ぶ大型バスも10台以上待機していた。そんな一部始終が生中継されたのである。
「地元局のABC7では沖合を航行するところから生中継をスタート。ゴールデンゲートブリッジをくぐり、サンフランシスコ湾に浮かぶアルカトラズ島を通り過ぎ、客船ターミナルからは離れたところにある殺風景な貨物桟橋に接岸する模様などを空撮も織り交ぜて伝えました。時には客室のバルコニーにたたずむ乗客の姿も映し出し、顔が識別できるほどのアップで捉えていたのです。中継スタジオでは、医療関係者がゲストとして出演するなど日本の情報番組と似たシーンも。一方で、乗客がビデオ通話で取材に答えるシーンは日本では考えられないところでしょう」(アメリカ事情に詳しいライター)
地元局では冒頭の3時間半ほどをテレビで生中継し、その後はネット中継に切り替えていた。桟橋では検疫を待つ乗客が100人以上も列を成す場面もあり、その待機列がクラスターになるのではと心配になるほど。現場にはカナダ国旗をあしらったテントもあり、カナダ国民は別枠で検疫を受けていたようだ。
「感染者を載せたと思われる白い救急車が桟橋を出ると、空撮ヘリが追跡。高速道路に沿ってしばらく飛ぶも、途中で断念していました。ほかにはストレッチャーに載せられた乗客らしき人物を青い救急車に乗せる場面では、乗客の荷物と思しき物品を黒い袋に詰めるシーンが生々しかったですね。他の乗客たちはバスに乗り、パトカーに先導されながらオークランド空港に移動。スタッフが空港内に通じるゲートを開け、バスは旅客ターミナルから離れた場所に待機しているカリッタエアの貨物機に横付けしていました」(前出のライター)
横浜港のダイヤモンド・プリンセス号(グランド・プリンセス号と同じクルーズ会社が運航)では固定カメラが遠くから映しており、乗客の顔が識別できるようなシーンはほとんどなかった。それに対してアメリカでは乗客のプライバシーはさほど重視されていないようだ。
(金田麻有)=写真はダイヤモンド・プリンセス号=