平松氏が言う。
「ブリーダーズカップのいいところは、短距離、中長距離、牡、牝、芝、ダート、年齢別にレースが細分化されている点。その馬に合ったカテゴリーを見つけやすいのです。ただ、逆にたくさんのレースに馬が分散するため、一つ一つのレースの出走馬の質が必ずしも最高になるとは限らない面はありますが。いずれにしても、ブリーダーズカップで勝ったほうが、種牡馬としての格は上で、買い手がつくのではないでしょうか。しかもアメリカの芝はヨーロッパより硬いので、日本の高速馬場に慣れている馬には有利。昨年、(武豊騎乗の)トレイルブレイザーが出走して4着でしたが、これは鼻出血グセのある馬でした。アメリカではラシックスという薬の使用も認められています」
トレイルブレイザーはオルフェーヴル同様、池江厩舎所属の馬。ラシックスは日本では禁止薬物に指定されているが、アメリカでは肺出血、鼻出血の予防薬として投与される、毛細血管の血圧を下げる降圧利尿剤だ。オルフェーヴルが出るとすれば、凱旋門賞と同じく3歳以上、芝2400メートルのブリーダーズカップ・ターフ(GI)だろう。
オルフェーヴルがまだ三冠奪取前、平松氏は池江師にインタビュー取材をした際、こんな提案をしている。「先生の厩舎にはいっぱいオープン馬がいるわけですから、オルフェーヴルと一緒にブリーダーズカップに何頭か連れて行って、いろんなレースを使い分ければいいのでは」
池江師はこれに対し、
「あ、それいいアイデアだ!」
と賛同したという。折しも日本ハム・大谷翔平が二刀流挑戦で大きな話題となっているスポーツ界。この提案が今再び池江師の胸に去来し、国際GI両ニラミの、さながら「二刀流」ウルトラCで臨もうとしてはいまいか──。さらに前出・トラックマンは、
「年末には香港ヴァーズがあったりもしますね。オルフェーヴルの父・ステイゴールドが引退レースで勝った国際GIですし。何が何でも凱旋門賞、ではないのでは。種牡馬としての価値を考えると、選択肢としてブリーダーズカップ出走があるのはいいことだと思いますよ。まぁ、池江師は『凱旋門賞を目標とするため、早めに(宝塚記念を)回避した』と言うように、こだわりがあることはわかっていますが‥‥」
オルフェーヴルは、順調にいけば7月半ばには馬場での調教が再開される。
「能力があるのは間違いないわけですから、出血が一過性のものであれば能力の高さがそれによって軽減されるものではなく、復活はありうるでしょう。もし、これで本当に凱旋門賞に行って勝ったらドラマになりますよ。競馬ファンとしては、そちらに期待したい気持ちはあります」(前出・平松氏)
現役最強馬、「最後の大パフォーマンス」やいかに。