高い壁に囲まれた作業場に、次々と高級車や重機が入っていく。暴力団関係者と思しき、不審な男たちも出入りしているという。暗黒のベールに包まれた、ヤード内で働いていたのはなんと不良黒人どもだった──。
関東某県の複数市が交わる山間部を訪れると、住宅街から離れた雑木林の一角に人目を避けるように無数のヤードが設けられていた。
高い壁に遮られた内部で何が行われているかはうかがい知れなかったが、従業員らしき複数の黒人が出入りする姿は確認できた。
意を決し、脚立を利用して中をのぞき込んでみると、整列された自動車、そして原形をとどめていない自動車の残骸が目に飛び込んでくる。さらに、奥のほうで作業に没頭する黒人たちの姿が見えたのである──。
ここ数年減少傾向にあった自動車盗難が、首都圏で再び増加の兆しを見せている。警察庁の統計などによると、今年1~4月における自動車盗難認知件数は、千葉県で1070件、茨城県で800件、埼玉県で647件。いずれも前年同時期比で10~50%増となっている。
被害状況はさまざまだ。自動車盗難といえば、以前はマンション駐車場の高級車が狙われるイメージだったが、最近の傾向では建設現場に夜間止めてあるクレーン車、郊外の畑の隅に置いてあるトラクターまでもが標的となっているという。
分業化されたプロの窃盗集団による犯行が目立つのも大きな特徴である。
自動車盗難犯罪に詳しい、元ヤクザ組織の幹部X氏が語る。
「盗む際は、“見張り役”“こじあけ役”といった具合に役割を分担してるよ。施錠されていても鍵やキーシリンダーを壊して、コネクター部分を取り出してエンジンをかけちまう。犯行時間は1台当たり10分程度もあれば十分だな」
そんな盗難車の多くが、海外へ不正に輸出されているのだ。
95年に規制が緩和され、中古車は無検査で輸出することができるようになった。以来、この制度を悪用して大がかりな窃盗団が盗難車の不正輸出を繰り返しているというのである。
X氏が続ける。
「海外に送る手段も巧妙になったな。盗んだ車両は『ヤード』と呼ばれる工場で部品ごとに解体されて、コンテナに詰めて海外に運び出すんだよ。自動車には固有の車体番号(車台番号)が付いていて、税関ではそれを照合することで盗難車かどうかのチェックを行う。だけど、車体番号の刻印は通常1カ所で、部品には刻印されていないからな。部品ごとに解体してしまったら、そのチェックはできないも同然。こうした税関手続きの盲点をついたら、盗難車を海外に運び出すことなんて簡単なんだよ」
もう1つ見逃せないのは、犯罪の舞台となっているヤードの経営者の多くが外国人という点である。ヤードとは、周囲を鉄壁などで囲まれた作業所で、都市郊外の農村部を中心として日本各地に多数点在している。
警察庁によると、昨年末時点で全国約2100カ所が確認されているのだ。
「自動車解体や中古車取引をするための許可を得て、正規の業者として経営しているヤードもあります。一方で、外国人、特にアフリカ系外国人経営による違法ヤードが自動車窃盗の温床になっている。これらのヤードと日本人の悪党がグルになって多国籍窃盗団を形成しているんです」(全国紙社会部記者)
郊外とはいえ、黒人が集団で出入りし、中で何をしているのかわからない、というヤードがあれば目立つだろうことは想像にかたくない。冒頭で紹介した、関東某県にも多くのヤードが進出していた。
日常的に黒人たちがせわしなく働く様子を目撃している、その県内の自動車整備会社経営者が言う。
「ウチの近くにも、昨年頃から解体施設らしきものが複数、知らぬ間に出来上がっていました。車の部品を積んだ不審なトラックが頻繁に出入りし、黒人従業員の姿が目につくことから、付近の住民は気味悪がって“ブラック通り”と呼ぶようになったんです」