「しっかし松田聖子ムカツクわ~」──徹底した毒舌と、漫才師らしからぬ美貌で人気を集めたのが春やすこ・けいこだ。ブーム真っ最中に18歳だった春やすこ(58)が、熱狂の日々を追想。
──80年のブームの時には、最年少ですよね。
やすこ 漫才師になるつもりはまったくなくて。私が14歳、けいこちゃんが17歳で松竹の養成所に入ったんですけど、いつの間にか「お前ら組め」って言われまして。漫才ブームは高校を卒業した直後ですね。
──松田聖子を筆頭に、芸能人に毒づきまくるという異色のスタイル。
やすこ 最初は普通のしゃべくりやってたんですけど、ある日「ヤングレディ」って女性誌を見てたら、芸能人の悪口だらけ(笑)。人生幸朗・生恵幸子さんが「ぼやき漫才」なら、「悪口漫才」があってもいいだろうって。人気が出てくると、売れてない芸能人から「ネタにしてください」って頼まれることも増えましたが、誰も知らん人をネタにしてもしゃあないし(笑)。
──それにしても、あれだけ悪口を言うと、さすがの松田聖子も怒ったりしませんでした?
やすこ あの頃、アイドルの運動会番組で一緒になって、すれ違いざまに「ネタにさしてもろうてます~」って言ったら、むしろニコニコされましたよ。ただ、ファンの人たちは怖かった。
──たしかに、逆恨みされかねないネタでしたね。
やすこ 封書は、ここにカミソリが入ってるなというのがすぐにわかりました。それと、聖子ファンの暴走族風にカラまれるという「どっきり企画」があって。もちろん、仕込みなんですけど、それは十分にありうることじゃないですか。私、思わずヴァーッと泣き出しましたよ。
──ブームはやすきよを筆頭に、ほとんどが先輩の男性ばかり。
やすこ 松竹芸能からブームにおったんは私たちだけでしたので、逆に気を遣ってもらいましたよ。ただ、オール阪神・巨人の巨人兄さんは好きじゃなかったんです。
──あらら、説教でもされましたか?
やすこ 直接は言われてないけど、巨人兄さんの態度にそれを感じました。ある日、営業先で食事に誘われて、お互いに誤解していることがわかって、そこからは打ち解けました。
──女流漫才師としては、海原千里・万里以来のアイドルコンビでした。
やすこ 私たちが売れた時には、千里万里さんは解散していらしたんですよ。ところが、あるワイドショーの企画で、久しぶりにおふたりがネタをやられるという機会があって。
──夢の共演ですね。
やすこ ところが、私たちより前に千里万里さんがネタをやらはったんです。私たち、裏で聞いてて怖くて涙が止まらなかったんです。もう、そのくらい漫才がうますぎてうますぎて。私はゴルフが趣味ですけど、プロの方と一緒に回った時の感覚でしたね。
──漫才師として初めて、篠山紀信撮影のヌードグラビアもありましたが。
やすこ 落ち目になってからではなく、売れてて体も若い時に記念に残せてよかったです。