「最近、気づかぬうちに寝てしまっていた。疲れかな」と思う人は「睡眠時無呼吸症候群」かもしれない。
これは、眠っている時に呼吸停止あるいは低呼吸の状態になる病気。症状が現れるのは睡眠時であるだけに、自覚していない人は多い。実は潜在的な患者数は、国内で200万~300万人にも上ると言われる。
この病気になる人の特徴は、肥満、首が太くて短い人、顎が小さい人。寝ている時に、オトガイ舌筋(頭頸部の筋肉の一つ)の活動は低下するが、これらの人は舌根部が上気道に落ち込むと、すぐに上気道がふさがってしまう。そのため、睡眠が深くなると、無呼吸になる状態が繰り返されるのだ。
「睡眠時無呼吸症候群」になると、日中に眠気が強くなり、集中力が低下する。さらに、脳や体に負担がかかり、高血圧や心筋梗塞、脳卒中などを併発しやすくなる。最悪、突然死につながることもある。
診断には、昼間の眠気の程度を調べる「エプワース眠気指数」という問診票が使用される。8項目において、眠くなることが多い(3点)、ときどき眠くなる(2点)、まれに眠くなる(1点)、決して眠くならない(0点)で採点してみよう。
【1】座って読書をしている。【2】テレビを見ている。【3】人がたくさんいる場所で座って何もしていない。【4】車に乗せてもらっている。【5】午後に横になって休憩している。【6】座って誰かと話している。【7】昼食後、静かに座っている。【8】運転中、渋滞や信号待ちで止まっている。
以上の状況で合計が11点以上だと病気の疑いがあるとされる。
治療はCRAPという装置やマウスピースを使った方法があるほか、減量や禁酒、適度な運動、生活習慣の改善が必要になることも多い。
日中眠気が強い人、寝ても眠い人、いびきがひどい人などは、一度簡易検査だけでも受けてみるとよいだろう。
田幸和歌子(たこう・わかこ):医療ライター、1973年、長野県生まれ。出版社、広告制作会社を経てフリーに。夕刊フジなどで健康・医療関係の取材・執筆を行うほか、エンタメ系記事の執筆も多数。主な著書に「大切なことはみんな朝ドラが教えてくれた」(太田出版)など。