昭和を代表する人気スポーツ漫画といえば、かなりの上位に「あしたのジョー」があがるだろう。主人公の矢吹丈が最終回で世界チャンピオンのホセ・メンドーサに判定負け、灰のように真っ白に燃え尽きたシーンでジ・エンドとなり、「死んでしまったのか?」と当時、物議を醸したものだった。
ところで、そんな「あしたのジョー」に登場するボクサーたちは、矢吹丈を始め、ほっそりと身の引き締まったボクサーが多かった。汗だくのランニングシーンや減量に苦しむ描写はあっても、筋トレシーンなど、当時はほとんど記憶にないのだが…。
元WBA世界ライトフライ級王者・渡嘉敷勝男氏のYouTubeチャンネル〈「渡嘉敷勝男公式」トカちゃんねる〉、4月27日投稿の〈【ボクサーの筋トレ】について!「昔は筋トレは禁止だった!?」〉で、渡嘉敷氏が昔と現在の筋トレ事情の違いについて語った。
「昔はスピードがなくなるから筋トレはしなくていいと言われましたよね」
冒頭、そう明かす渡嘉敷氏だが、その後の話をまとめると、5発当てて倒すより1発で倒したほうがいい、連打のまぐれ当たりや破れかぶれの1発のパンチが当たって倒せればいい、と今の時代は、筋トレから得るパワーは必要だと主張した。
ただし、大胸筋をつけすぎるとストレートが打ちにくくなるとも言われていることから、「タイプにもよる」と言う渡嘉敷氏だが、「ストレートを得意とする人は胸が張ってないほうが打ちやすい。胸が張って力がある人はフック系のほうがいいんですよね」と、上背のある敵とはむしろフック系で勝負したほうが有利だと秘策を明かした。
思えば、ヘビー級で活躍したマイク・タイソンや、ボクシング漫画「はじめの一歩」の主人公・幕之内一歩のように背の低いタイプは大胸筋を鍛えてフックを強化するボクシングスタイルを見せている。
「昔は階級制覇より連続防衛が主流でした。具志堅用高さんの13回の防衛記録は価値があったんです。昔は体重が増えると、『お前、そのクラスに居れなくなるぞ』って。だから筋トレは重視されてなかったんですね」
と振り返る渡嘉敷氏。しかし現在では体重を増やさずにパワーをつける方法もあるようでトレーニングも近代化していると強調した。
今を時めく井上尚弥選手もトレーニングに積極的に取り入れていると言う筋トレ。「あしたのジョー」の時代に筋トレが導入されていたなら、矢吹丈の描かれる体型、結末もまた変わっていただろうか?
(ユーチューブライター・所ひで)