沖縄・宜野湾の横浜DeNAキャンプを盛り上げたのは、2月5日から3日間、「視察」名目で滞在した松井秀喜氏(40)。実はこれ、単なる視察ではなく、周到に仕組まれた「囲い込み工作」の一環だったのである。
そもそもこの「オファー」を松井氏は何度も断ったが、「着信履歴を見てみないと(何回電話がかかってきたのか)わからない」というほど中畑清監督(61)からラブコールを受け、「視察」が実現。その中身といえば、中畑監督が4番と公言する筒香嘉智(23)への助言あり、マウンドで中畑監督との「直接対決」あり、フリー打撃披露ありと盛大にサービス精神を発揮し、「大フィーバーを巻き起こしてくれた。感謝だし、大満足」と中畑監督を大いに喜ばせたものだ。メディアも200人近くが殺到し、キャンプの話題を独占。DeNAの戦略はまんまと成功したのだが、その裏でひそかに「次」への布石が打たれていた。それこそが「松井監督招聘」計画である。
松井氏は昨年オフに巨人からのコーチ就任要請、春キャンプでの臨時コーチ要請を続けて断り、引退以降、巨人が敷く「松井監督誕生」路線にやんわりと拒否反応を示している。
「監督の話題をいろんなところで振られても、絶対にやりたいとも興味があるとも答えない。今なお実権を持つ渡辺恒雄球団最高顧問(88)への不信感と、指導者ならまず古巣ヤンキースでコーチ業の勉強をしたい、との願望があるからです」
こう語るのは、松井氏をよく知る球界関係者。巨人も松井氏を監督としてダイレクトに呼べない場合に備え、高橋由伸(39)を兼任打撃コーチに就任させ、「ポスト原」の育成に手をつけた。もちろん中畑監督と高田繁GM(69)の元巨人コンビは、その情報をいち早く察知。巨人の「脱松井」、そして松井氏の「嫌巨人」的姿勢につけ込むべく、「ポスト中畑」として松井氏を監督、それが無理ならコーチとして囲い込んでしまおうと策略を練ったのだ。
3日間の滞在中、高田GMは松井氏と極秘会食の場をセッティングし、それとなく感触を確かめている。球団関係者によれば、その席での高田GMの「口説き文句」は次のようだった。
「俺も中畑も巨人OBだが、巨人を出て他の球団で球界発展に力を貸した。それが元巨人の宿命と責任だ。お前もいずれは巨人で監督をするかもしれないが、それまでは巨人にとらわれずに他球団で視野、可能性を広げたほうがいい」
一軍の練習休みの6日には、三浦大輔(41)、高橋尚成(39)らが松井氏とラウンドする「接待ゴルフ」も敢行。松井氏は「温かく迎えてもらった」とコメントし、好印象付けには成功したと言える。スポーツライターが言う。
「もともと、DeNAはメジャー型の球団経営に理解のある、考え方が斬新で若い監督、コーチを理想像に掲げている。松井氏ならばメジャー経験をマネージメントに反映させられるし、ネームバリューも抜群。DeNAサイドが、無理を承知で今オフの招聘準備を検討するのも無理はありません。松井氏なら中畑監督からのバトンタッチもうまくいくし、もしコーチで来てくれるなら、中畑監督の続投も決まったと同じようなもの」
交渉役となるであろう中畑監督は、気になる発言をしていた。
「俺の交渉力はすごいんだ。プロ野球選手会の会長だった時からそうだったからな。アハハハハ‥‥」
巨人からの「強奪」に自信アリ、のセリフである。
今回の視察を快く思っていなかった巨人は、元ヤンキース広報で現在は巨人アドバイザー職にある広岡勲氏(48)を視察の付き添い人として送り込んだ。
「DeNAが今回の機会を利用して松井氏へ必要以上のアクションを起こさせないように監視、牽制する狙いもあった。ひょっとすればひょっとするかも、との危機意識の表れです」(スポーツライター)
松井氏を巡る巨人対DeNAの「場外乱闘」はどう決着するのか──。