新型コロナウイルスの感染拡大による中断期間からひと足早く再開したドイツ・ブンデスリーガにおいて、ヘルタ・ベルリンのデドリック・ボヤタがさっそくガイドラインを無視した“濃厚接触“で味方の得点を祝福している。
2019-20シーズンのプロリーグが5月16日より再開したドイツでは、第26節のホッフェンハイムvsヘルタ・ベルリンの一戦が開催され、3-0でヘルタが完勝を飾ったが、得点時のパフォーマンスに「グレーゾーンな振る舞い」があったとして物議を醸した。
問題の場面は、後半13分に訪れた相手のオウンゴールによるヘルタの得点シーン。久しぶりのチームのゴールに喜んだボヤタが味方のマルコ・グルイッチに抱きつき、顔を両手でつかみながら頬に“濃厚なキス“をしてみせたのだ。ドイツサッカーリーグ機構は今週末でのリーグ再開に向けて、51ページにもなる“コロナ対策“資料を自治体政府に提示しており、スタジアムに観客を入れない点や、ゴール後のハグや集合などの濃厚接触を避ける点などを感染拡大防止の指針として記載。そうした様々な配慮が敷かれていた中でのボヤタのキスパフォーマンスは、リーグ側のポリシーに反する行為であるだけでなく、万が一にも新型コロナの感染を引き起こしてしまうリスキーな振る舞いだったと考えられる。
「このボヤタのキスについて、ヘルタのブルーノ・ラッパディア監督は『こうした風景もフットボールの一部だと思うし、選手は幾度も検査を受けているから平気だよ』とコメントし、擁護の姿勢を示しました。また、リーグ側もゴール後のセレブレーションに関しては、あくまで感染を広げないためのガイドラインに過ぎず、処分の対象とはなり得ないと説明。ひとまず、ボヤタに何らかのペナルティーが与えられることはないとのことですが、世界中で配信されるサッカー先進国のプロ選手がこうした振る舞いを見せることは多方面から疑問の声が出ており、日本でも『第二波や第三波の感染が来るのは確実だなと思った。選手や監督が初めからこういう考えならサポーターも同じようになる』『国によって感じ方はあるだろうけど、規則なので守ってほしかった』『控えて、という行為をこうやって平気でやってしまうから欧米ではコロナの被害が大きいんだろうな』といった反応が出ています」(スポーツライター)
なお、同時間帯に行われたドルトムントvsシャルケの一戦では、ドルトムントの19歳FWアーリング・ハーランドが前半29分に先制ゴールを奪取するも、チームメイトとは一定のソーシャルディスタンスを保ちながら接触をせずに得点を祝福。こちらは、先のボヤタのケースとは異なり、リーグの指針に則った“手本“を示したと言える。
およそ100年前に世界を襲ったスペイン風邪の流行時には、第一波が終息した後に、やや時間を置いて、第二波、第三波と複数回にわたってウイルスの蔓延が起こったというケースも確認されている。これ以上ヨーロッパでの感染を広げないためにも、まずはリーグ側が規定した指針にきちんと則った上で、プロとしての適切な振る舞いをしてほしいところだ。
(木村慎吾)=写真はイメージ=