社会

池上彰「アベノミクス“成長戦略”の盲点」(1)消費増税の奥の手

 記録的な猛暑と未曽有の豪雨が日本列島を襲う中、気がつけば庶民生活には、物価高が足音も高らかに押し寄せ、そして来春には消費増税の苛烈な賦課も待ち受けている。いまだアベノミクスの恩恵にはあずかっていない読者の不安に、Mr.ニュースがナットク解説!

──今週は、庶民の暮らしがどう変わるのかを教えてください。

 はい。では、反対に質問ですが、あなたは今の暮らしぶりをどう感じていますか?

──ええっと、給料は特別上がっていないが、物価だけがジワジワ上がってきている気がします‥‥。

 なるほど。では、まず皆さんが気になっている消費税から始めましょうか。今年4~6月期のGDPの成長率を年間の成長率に換算すると2.6%。明らかに景気回復の動きです。2%上がっていないと消費税は上げられないことになっていましたから、安倍内閣としては、消費税を上げる方向で検討しています。

──政府は有識者にヒアリングすると言ってますが、やはり増税するんですね。

 ええ、でも、せっかく景気が上向きになってきたのに、97年に橋本内閣が消費税を3%から5%へ増税して景気が失速した時のように、景気が腰折れしちゃうのでは、と心配する声もあります。ですから、安倍総理は14年4月から8%、15年10月からは10%という方法以外にもいろんなシミュレーションを検討させているようです。

──そうなんですか、それはどんな方法ですか?

 例えば、毎年1%ずつ上げて10%にするという方法です。もし来年4月から8%にするなら、3月まではものすごくモノが売れる。ところが、4月になるとピタッと消費が止まることが予想されます。一方、年に1%ずつなら、4月以降も消費の落ち込みがなだらかになるというわけです。

──なるほど~。かつてエコポイントで終了直前に家電売り場に長蛇の列ができたのに、その後ドーンと買い控えが起きたというようなリスクがなくなるわけですね。

 えぇ、あれを“需要の先食い”と言いますが、消費増税前に駆け込み需要が起きても、その後まったくモノが売れなくなるのでは増税の意味がなくなってしまうわけです。とはいえ、対外的には、日本はIMF(国際通貨基金)などに対して消費税を上げて財政再建するという国際公約をしている。つまり、消費増税を先送りすると宣言した段階で日本は国際的な信用を失ってしまう。ところが1%ずつ上げると言えば、公約を守ったということになり、国際的な信用も失わないで済み、日本の国債の価値が暴落する危険性もなくなる。これは法律を改正すればできるわけですから、ありうる選択でしょう。

──なるほど、3%だったのが1%アップなら国民も納得し、安倍総理の人気も落ちないで済みそうです。

 そう、とにかく安倍総理としては参議院でも3分の2を確保して憲法改正できるような状態にするまでは景気対策で国民の支持を得ようとしているわけです。

◆アサヒ芸能8/20発売(8/29号)より

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