1日の感染者数が31人以上となり、東京都に東京アラートが発令されたのは6月2日夜。アラートはすでに解除されているが、6月下旬現在、何日にもわたって目安となる感染者数をグンと上回っている。この間、報道では、「夜の繁華街の感染者」という言葉がよく聞かれるようになった。ホストクラブなどの接待を伴う飲食店での集団検査が進んだためだが、その代名詞のように言われたのが新宿・歌舞伎町である。
そんな中、ネットの噂によると、今、歌舞伎町で、カップルで大盛況なホテルがあるという。アパホテル新宿歌舞伎町タワーだ。
というのも、アパホテルは新型コロナ感染拡大後、「新型コロナウィルスに負けるなキャンペーン」と銘打って、テレワークでの利用や長時間通勤による感染リスクを軽減させるため、5月30日から6月30日までの期間限定でシングル1泊1室2500円という破格の価格を打ち出しているのだ。アパホテルの公式サイト・アパアプリ経由の予約限定プランだが、当初サラリーマンの間で反響を呼んだ後、その低価格に魅力を感じた若いカップルたちも集まってきているというのである。
中でも、アパホテル新宿歌舞伎町タワーは、ホテルからほど近い歌舞伎町奥のカップルズホテル街が最安でも一泊7500円であり、アパホテルに一人一部屋とって夜に一つのベッドでカップルが寝て肌を合わせても一晩5000円にしかならないということで、とりわけ、カップルが集まっているという。そこで記者はその噂の真偽を確かめるべく、歌舞伎町のまさに中央にある同ホテルに泊まりに行くことにした。
6月某日の午後のチェックイン時間、フロントの前には30名以上も並び、その半分ほどが若いカップルだった。
手には飲み物や弁当が入っているコンビニ袋を持っている。一度部屋に入り、テレワークで仕事を済ませ、午後10時前に部屋を出た。エレベーターに向かう途中、吹き抜けの反対側の部屋に20代ぐらいの若い男女が入っていく姿が確認できた。
歌舞伎町の街に出る。緊急事態宣言が解かれて間もない頃だったが、午後10時の歌舞伎町はすでに日常に戻りかかっていた。ガールズバー、ホスト、夜のクラブなどの客引きがあちらこちらにいて、半分ほどはマスクレス。午後10時には飲食店が閉店なのでコンビニで弁当を買う。
数百メートル歩きホテルに戻ってくると、フロント前にはやはり15人ほどの列。カップル率は8割ほど。弁当を持ってエレベーターに乗ると60代と思しき背広を着たスラッとした紳士の胸にごく普通の50代ぐらいの女性が、胸に頭を預け、うっとりした表情をしていた。
翌朝のチェックアウト時間である午前11時を過ぎてからテレワークの休憩がてらドアを開けて外の様子をうかがってみた。
すると新しいタオル一式とアメニティミネラルウォーターなどが入ったビニール袋が置かれていた。しかし、同じフロアの私が宿泊している以外の部屋はその袋がなく、すでに袋をとった後だとしても、テレワーク利用の連泊客は少なそうだった。
翌日の午前中にホテルをチェックアウト。エレベーターには20代前半と思しき美男美女がエレベーターの中でイチャイチャしていた。女性がイケメン男子の腰に手を回しており、目のやり場に困っていたらもう一組カップルが入ってきた。やはり20代のようだ。体を密着させることはなかったが、一人で場違いなところに来てしまったような気がして少々バツが悪かった。
歌舞伎町奥のホテル街に行く手前にあるこのホテルだけに、どうやらカップル利用で「一泊5000円」で泊まるという流れがかなりできていたように思えた。
今年4月には全国8棟のホテルを軽症者の療養施設として貸し出すことを表明したアパホテル。社会貢献的イメージも強いサービス精神から、元谷芙美子社長の“想定外”の現象も起きていたようである。
(西牟田靖)