政治

歴代総理の胆力「鳩山由紀夫」(2)「友愛精神」と「宇宙人」

 さて、それまでの政治の仕組みから「脱・官僚」「政治主導」と一変させたスローガンで新しい政治体制を目指した鳩山政権は、なぜ1年ももたずに退場を余儀なくさせられたのかである。

 最大の要因は、明治時代の太政官制度以来のこの国の官僚制度の堅牢を、軽視してかかったことが一つあった。政権末期には、各省の次官が官邸を敬遠、顔を出すことがなかったという異例さが、それを示している。そのうえで、トップリーダーには部下が畏怖する「強さ」が不可欠だが、鳩山が人間として優しすぎたとも言えた。

 鳩山家には由紀夫の祖父・鳩山一郎元総理大臣以来の「友愛精神」というものがあった。昭和28(1953)年、一郎は若い頃立ち上げた「友愛青年同志会」の綱領に、かつてのフランス革命のスローガン「自由・平等・博愛」を反映させ、「われらは自由主義の旗の下に友愛革命に挺身し、左右両翼の極端なる思想を排除して健全明瞭なる民主社会の実現と自由独立の文化国家の建設に邁進する」と謳ったものであった。

 すなわち、「友愛」が「博愛」と同一線上にあるとするもので、由紀夫もまた「友愛」は「革命の旗印ともなった戦闘的概念」と解釈、政治の世界での「革命」に挑んだということのようだった。

 また、そうした精神の一方で、由紀夫は東大工学部から米スタンフォード大で数学を学んだ理系出身者らしく、「政治を科学する」として、その手法への意欲も強かった。学んだ「問題解決学(オペレーションズ・リサーチ=OR)」の導入ということで、それまで「数」に頼っていた自民党政治を、効率よく全体を動かすために数学的、合理的に分析、それをもって自らの意思決定とすることも狙っていたようであった。

 結果、こうした手法も、惜しむらく「政治とは理屈よりもメシだろう」との大合唱の中で、わずか1年足らずでかき消されてしまったということだった。これら斬新すぎた“発想”は、「宇宙人」の異名も残したのだった。

■鳩山由紀夫の略歴

昭和22(1947)年2月11日、東京都文京区生まれ。東京大学工学部卒業後、米スタンフォード大学留学、博士課程修了。専修大学助教授を経て、昭和61(1986)年7月、衆議院議員初当選。民主党代表。平成21(2009)年9月、内閣組織。総理就任時62歳。現在73歳。

総理大臣歴:第93代 2009年9月16日~2010年6月8日

小林吉弥(こばやし・きちや)政治評論家。昭和16年(1941)8月26日、東京都生まれ。永田町取材歴50年を通じて抜群の確度を誇る政局分析や選挙分析には定評がある。田中角栄人物研究の第一人者で、著書多数。

カテゴリー: 政治   タグ: , , , , ,   この投稿のパーマリンク

SPECIAL

アサ芸チョイス:

    デキる既婚者は使ってる「Cuddle(カドル)-既婚者専用マッチングアプリ」で異性の相談相手をつくるワザ

    Sponsored

    30〜40代、既婚。会社でも肩書が付き、責任のある仕事を担うようになった。周囲からは「落ち着いた」なんて言われる年頃だが、順調に見える既婚者ほど、仕事のプレッシャーや人間関係のストレスを感じながら、発散の場がないまま毎日を過ごしてはいないだ…

    カテゴリー: 特集|タグ: , |

    これから人気急上昇する旅行先は「カンボジア・シェムリアップ」コスパ抜群の現地事情

    2025年の旅行者の動向を予測した「トラベルトレンドレポート2025」を、世界の航空券やホテルなどを比較検索するスカイスキャナージャパン(東京都港区)が発表した。同社が保有する膨大な検索データと、日本人1000人を含む世界2万人を対象にした…

    カテゴリー: 社会|タグ: , , , |

    コレクター急増で価格高騰「セ・パ12球団プロ野球トミカ」は「つば九郎」が希少だった

    大谷翔平が「40-40」の偉業を達成してから、しばらくが経ちました。メジャーリーグで1シーズン中に40本塁打、40盗塁を達成したのは史上5人目の快挙とのこと、特に野球に詳しくない私のような人間でも、凄いことだというのはわかります。ところで、…

    カテゴリー: エンタメ|タグ: , , |

注目キーワード

人気記事

1
日本と同じ「ずんぐり体型」アルプス山脈地帯に潜む「ヨーロッパ版ツチノコ」は猛毒を吐く
2
長与千種がカミングアウト「恋愛禁止」を破ったクラッシュ・ギャルズ時代「夜のリング外試合」の相手
3
怒り爆発の高木豊「愚の骨頂!クライマックスなんかもうやめろ!」高田繁に猛反論
4
沖縄・那覇「夜の観光産業」に「深刻異変」せんべろ居酒屋に駆逐されたホステスの嘆き
5
世間はもう「松本人志」を求めていないのに…浜田雅功「まっちゃん」連呼のうっとうしさ