「(沖縄の尖閣諸島は)中国側から見れば(日本が)盗んだと思われてもしかたがない」──鳩山由紀夫元総理(66)が香港のフェニックステレビの取材にこう話し、その様子が去る6月25日、中国内外に報じられた。2日後には北京で開かれた大学主催のフォーラムでも同様の発言をしたが、日中間で「神経戦」が繰り広げられている最中のこの「妄言」。かつてこの男を「総理」にしてしまったことは、日本国民にとって痛恨の極みだろう。
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まずは「ヒゲの隊長」こと佐藤正久参議院議員が鳩山氏をこう糾弾する。
「我が国は『尖閣諸島に領土問題は存在しない』という立場。ところが鳩山さんがああいう発言をして『係争地』ということになってしまうと日本の施政権があるのかという話になり、ひいては『第三国間の領土問題に関与しない』とする安保条約に基づいて、米国も日本を守ってくれなくなる。
そもそも一国のリーダーたるもの、国の主権と領土を、責任を持って守るのが責務。その座にあった鳩山さんがそれを放棄して利敵行為を行うなど、ありえない話です。鳩山さんは今後も中国寄りの発言をして、政府の考え方と異なる姿勢を示すかもしれない。今後も元総理や元政府高官らが利敵行為となる情報を発信し続けるなら、それを防止・処罰する法律も考えなくてはならない。他の国と比較して、何らかの法的な縛りが必要ではないかという議論が、超党派で湧き起こってくるかもしれませんよ」
鳩山氏はフェニックステレビの取材に対し、「カイロ宣言の中に尖閣が入るだろうということは、そういう解釈は、中国側からは十分に成り立つ話だ」
カイロ宣言とは、第二次大戦さなかの1943年に中華民国の蒋介石と、アメリカのルーズベルト大統領、イギリスのチャーチル首相が、日本の戦後処理を巡り行った会談で出された宣言。
中国問題に詳しい評論家の宮崎正弘氏が言う。
「確かに、日本がのんだポツダム宣言には『カイロ宣言を履行する』と書いてあり、カイロ宣言には『日本が盗取した中国の領土を返還せよ』と書いてある。ところが、それに尖閣が含まれるとはどこにも書いていないんです。しかも、カイロ宣言は3首脳のいずれも署名がなく、プレスリリース(マスコミ向け発表)にすぎず、法的効力がない。第一、当時の蒋介石率いる中華民国は連合国側にいて、現中国と何ら関係がない。ところが、中国は『台湾(中華民国)は自国領土。台湾が尖閣諸島を自国のものだと主張している。だから尖閣諸島は中国のものだ』という飛躍した論法なんです。なのに、鳩山さんは中国側に乗せられてあんな発言をしている。諸外国の規範に照らすとスパイと同義に扱われる利敵行為ですよ」
菅義偉官房長官は「絶句した。開いた口が塞がらない」と批判したが、多くの国民も同じ気持ちに違いない。
政治部記者があきれて言う。
「総理を務めた立場での国益無視の妄言連発の鳩山さん問題をどうするか。我々の間では、今後何かあっても彼の言動にいちいち反応せず、国民全員で『鳩山?WHO?』と言ってやればいいんじゃないか、なんて声まで上がっていますよ」(政治部記者)
鳩山氏をよく知る政治評論家の小林吉弥氏も、さすがに嘆息してこう言う。
「安倍政権が成立してから日中関係は冷え込むばかりで、今回の発言も鳩山さんなりに危惧した結果、関係修復を願って出た言葉だと思いますが、いつものことながら言葉が足りず根回しもしていない。政治の世界ではこの2点が欠くべからざることなのに、彼の欠点がもろに出てしまった」
もはや、故郷の「宇宙」に追放するしかないのかも!?
◆アサヒ芸能7/11号より