座っている時に腰やお尻、太腿などにビリッと電気が走ったような痛みを感じる人は「坐骨神経痛」かもしれない。坐骨神経は末梢神経で最大のもので、お尻から太腿、ふくらはぎへとつながる長い神経のこと。
「坐骨神経痛」は病名ではなく、坐骨神経に生じた痛みやしびれなどの総称である。
特に年代には関係ない。高齢者だけでなく、若い世代や中高年にも多く発症する。スポーツのしすぎや、デスクワークでの長時間座りっぱなしなど、人によって原因はさまざまだ。
痛みが出る場所も症状も異なり、腰や太腿、お尻などのしびれや痛みだけでなく、足のしびれやだるさ、冷え性、頻繁に起こるこむら返り、頻尿や尿失禁などを伴うことも多い。
坐骨神経痛が原因の主な疾患が「腰部脊柱管狭窄症(ようぶせきちゅうかんきょうさくしょう)」だ。加齢によって背骨が変形したり、靱帯が厚くなったりすることで、背骨の後ろ側にある神経の通る管(脊柱管)が狭くなり、神経が圧迫されることで腰の痛みや足のしびれを発症する。治療においては、神経への血流を改善する血管拡張薬や消炎鎮痛薬、神経ブロックが使われることもあるが、重症の場合には手術が必要なことも。
若い人に多く見られるのは「腰椎椎間板(ようついついかんばん)ヘルニア」だ。背骨は椎体という骨によって形成されていて、この椎体と椎体の間にはクッションの働きをする椎間板がある。この椎間板が潰れて飛び出すことで、腰椎の神経を圧迫して痛みが発症する。
これらの予防には「重いものを持たない」「長時間同じ姿勢はとらない」「肥満防止」を心がけて。特に坐骨神経痛が悪化すると、立っていても座っていてもつらくなる。寝る時は楽な体勢を見つけ、腰の下や膝の間などに抱き枕やクッションを挟んで調整するのもよいだろう。痛みを感じたら、自己流の判断は禁物なので、必ず整形外科を受診して医師の判断をあおぐことが必要だ。
田幸和歌子(たこう・わかこ):医療ライター、1973年、長野県生まれ。出版社、広告制作会社を経てフリーに。夕刊フジなどで健康・医療関係の取材・執筆を行うほか、エンタメ系記事の執筆も多数。主な著書に「大切なことはみんな朝ドラが教えてくれた」(太田出版)など。