「最近、手先がしびれる」──こんな症状があったら「手根管症候群」かもしれない。これは、手の親指から薬指にかけて、しびれや痛みを感じる病気だ。
「手根管」とは手首の部分にある骨と靱帯に囲まれた狭いスペースを指す。その中を9本の腱と正中(せいちゅう)神経(手の中の感覚を支配する神経)が通っているのだ。しかし、何らかの原因で、正中神経が圧迫されると、指にしびれが起きてくるのだ。
この病気は、手首の曲げ伸ばしを繰り返しする仕事や、家事などに従事している人に多く見られるが、原因不明の場合も多い。
「手根管症候群」と、単なる手の痛みの見分け方は、まず「小指以外の指にしびれ・痛みがある」か、どうかだ。小指がしびれない理由は、正中神経は手根管を通って親指、人差し指、中指、薬指の4つに分かれているからだ。
初期症状は、指先のチクチク感や痛みがあるが、次第に指の筋力が低下して、つまむ・握る・しぼる、ペットボトルのフタを開けるなどの手を使った動作がしづらくなる。
診断方法は主に2つ。ひとつは、手首を診察用ハンマーなどで軽く叩き、親指や薬指に痛みやしびれが生じるかを診る「ティネル徴候」だ。もう一つは「ファーレン徴候」。これは、指を下に向けて両手の甲を合わせるポーズをとった時に、手のしびれや痛みが強まるかを確認する方法である。
治療は軽症の場合、仕事などを制限して安静にするのが望ましい。ステロイド薬の注射や消炎鎮痛薬、メチコバールなどの内服薬を使用する。それでも症状が改善されない場合は、神経の圧迫を取り除く手術が必要となる場合もある。
この病気は、早期発見・早期治療が重要。指先の痛みやしびれを甘く見ず、早めに医療機関を受診しよう。
田幸和歌子(たこう・わかこ):医療ライター、1973年、長野県生まれ。出版社、広告制作会社を経てフリーに。夕刊フジなどで健康・医療関係の取材・執筆を行うほか、エンタメ系記事の執筆も多数。主な著書に「大切なことはみんな朝ドラが教えてくれた」(太田出版)など。