最近、脚の重さやだるさを感じたら、太腿やふくらはぎを見てほしい。もし、脚の皮下静脈の血管が太く目立ったり、クモの巣のように血管が透けて見えていたら「下肢静脈瘤(かしじょうみゃくりゅう)」かもしれない。
これは脚の血管が膨れてコブ状になる病気だ。
静脈は本来、血液を心臓に戻す役割を果たすが、脚の静脈は血液を下から上へ、重力に反する形で戻す力が必要となる。この時、ふくらはぎの筋肉が収縮し、ポンプの役割を果たして静脈内の血液が心臓に送られる。しかし、脚にコブ状のものができると、血液の逆流を防ぐために備わっている逆流防止弁がうまく機能しない。そのため、血液循環が悪くなり、脚に老廃物がたまり、皮膚の表面にボコボコと血管が浮き上がってしまうのだ。
静脈が太く浮き上がっているだけなら、見た目上の問題だけで特に問題はない。だが、静脈瘤のある場所は血流が悪くなっているために、進行すると皮膚の炎症を起こし、かゆみや痛みを伴う場合もある。
重度の静脈瘤がある場合は要注意だ。下半身全体が血行不良の状態にあるケースも多く、しびれや血栓などのトラブルにつながる危険もある。
治療は、医療用弾性ストッキングや弾性包帯で脚に強い圧をかける「圧迫治療」が主流。悪化すると手術の場合もある。
この病気は脚の静脈に負担がかかる状態が続くと発症しやすい。特に長時間のデスクワーク、脚の筋肉をふだんあまり使わない運動不足の人、むくみやすい人に多く見られる。
予防法は、長時間同じ姿勢をとらないこと。脚の血流をよくすることもポイントだ。ふくらはぎのマッサージやジョギングなどの軽い運動、こまめな水分補給や冷たい飲物を取りすぎないことを心がけよう。
脚に太い血管が浮き出ていたら、皮膚科を受診してみたほうがいい。
田幸和歌子(たこう・わかこ):医療ライター、1973年、長野県生まれ。出版社、広告制作会社を経てフリーに。夕刊フジなどで健康・医療関係の取材・執筆を行うほか、エンタメ系記事の執筆も多数。主な著書に「大切なことはみんな朝ドラが教えてくれた」(太田出版)など。