公開から10日間で興行収入100億円を最速突破したアニメ映画「鬼滅の刃 無限列車編」。01年に「千と千尋の神隠し」が記録した歴代1位の308億円超えも視野に入る爆発的人気で、日本中に大ブームを巻き起こしている。話題に乗るべく、映画を見ていなくてもすぐわかる、お手軽ガイドをここに──。
原作は、吾峠呼世晴(ごとうげ・こよはる)氏による「週刊少年ジャンプ」連載の漫画。劇場に足を運ぶ予習として、単行本の売れ行きも再加速中だ。舞台となるのは、食人鬼が跋扈する架空の大正時代。人間が傷口に鬼の血を浴びることで「鬼化」し、理性を失って他人に襲いかかるという、ゾンビ映画さながらの設定となっている。
主人公は、鬼の急襲で母と4人の弟妹を失った少年・竈門炭治郎(かまど・たんじろう)。襲撃から生き延びたものの、鬼化してしまった妹・竈門禰豆子(かまど・ねずこ)を人間に戻す方法を探し、あまたの鬼と戦う物語である。鬼は体に損傷を与えても再生してしまうため、首を刀ではねるか太陽の光を浴びさせなければ、絶命させることができない。
こうして炭治郎が政府非公認組織「鬼殺隊(きさつたい)」の仲間と共に剣士としての鍛錬を重ねることから「鬼滅の刃」と題される。
炭治郎の同期で盟友となる黄色い髪の小心者・我妻善逸(あがつま・ぜんいつ)や、猪のかぶり物をまとった嘴平伊之助(はしびら・いのすけ)ら数百名を超える剣士で構成される鬼殺隊。中心メンバーとして存在感を放つのが「柱(はしら)」と呼ばれる9人の師範だ。
呼吸による身体活性術「全集中の呼吸」の流派に従い「水の呼吸」を扱う水柱(みずばしら)の冨岡義勇(とみおか・ぎゆう)、「音の呼吸」を極めた音柱(おとばしら)の宇髄天元(うずい・てんげん)ら実力者がそろう。鬼化した禰豆子も、炭治郎の師匠・鱗滝左近次(うろこだき・さこんじ)による「人を傷つける鬼を許すな」との暗示で、力強い味方として活躍する。
鬼殺隊が最終的に打倒を目指す鬼の首領が「鬼舞辻無惨(きぶつじ・むざん)」なる、平安時代から1000年以上生き続ける「鬼の始祖」。みずからの血を与えることで人間を鬼に変えられる唯一の存在で、日頃はさまざまな人間の姿に扮して暮らしている。
そんな鬼舞辻が鬼殺隊を殲滅させるべく擁する「鬼の精鋭部隊」が、12体の鬼で構成された「十二鬼月(じゅうにきづき)」。強さにより「上弦(じょうげん)」と「下弦(かげん)」に分類され、それぞれ「壱・弐・参・肆・伍・陸」と序列がつけられている──。
こうして多数のキャラクターが登場する「鬼滅の刃」は、今年5月に連載が終了した漫画版、劇場版、テレビアニメ版が存在する。
上映中の劇場版では炭治郎、禰豆子、善逸、伊之助に加え、絶対的実力者・炎柱(えんばしら)の煉獄杏寿郎(れんごく・きょうじゅろう)による下弦の壱・魘夢(えんむ)と上弦の参・猗窩座(あかざ)との戦いが描かれるが、物語全体から見てどんな位置づけとなるのか。サブカルライターの奥田恭平氏が解説する。
「映画化された『無限列車編』は、全23巻の単行本の7巻と8巻に掲載された前半最大の見せ場。テレビアニメ版『鬼滅の刃 竈門炭治郎 立志編』で描かれた直後のエピソードです。アニメ最終回で映画版の製作が告知され、1年以上も待ち焦がれた劇場公開でした」