12月4日発売のコミックス23巻をもって完結した大ヒットマンガの「鬼滅の刃」。全国各地の書店でファンが最終巻を買い求める様子は地元紙の記事で取り上げられており、流通の関係で発売が遅れた沖縄県では7日付の琉球新報が『3日遅れ「鬼滅の刃」待っていた!沖縄でも最終巻発売 開店前からファン並ぶ』との見出しで、その人気ぶりを報じていた。
愛媛県では発売日当日にアニメの第9話と10話が放送され、平均世帯視聴率は20.2%をマーク。放送局のテレビ愛媛では今年2番目の高視聴率だったという。上映中の映画版に引き続いて社会現象を呼び起こしている最終巻を巡り、購入者からは「ファンの熱き絆」を実感したとの声が続出しているようだ。
「『鬼滅の刃』は週刊少年ジャンプにて4年にわたって連載され、5月18日発売の第24号にて完結。つまり最終回の内容はジャンプ読者なら誰でも知っている状況です。その一方で同作品にはいわゆる《コミックス派》が多く、コミックスのみで『鬼滅の刃』を楽しんでいるファンは、終盤のストーリーを知らない状態で最終巻を購入。そんなコミックス派たちから《鬼滅ファンのおかげでネタバレしないで済んだ》《熱い絆を感じた!》といった感謝の声が続出しているのです」(サブカル系ライター)
「鬼滅の刃」ほどの人気マンガであれば、連載が最終回を迎えた時点でネタバレのツイートや画像がネット上にあふれそうなもの。ファンなら誰しもが気になる主人公・竈門炭治郎の運命や鬼舞辻無惨との最終決戦、そして炭治郎の妹で鬼と化した禰豆子は人間に戻れるのかなど、最終巻で明かされた内容はすぐにでも熱い議論に発展しそうなものだ。
ところが実際にはそれらの内容が漏れることはほとんどなく、コミックス派はまっさらな状態で最終巻を楽しむことができたのである。
「どのマンガでもそうですが、この『鬼滅の刃』では特に、ファンのなかに『読者も物語の担い手である』という意識が強かったように思えます。映画も含めた社会現象は、作品とファンによる共同作業だということです。最終回の掲載時点でコミックスはまだ21~23巻を残していましたが、それらの発売日が公式アナウンスされていたことにより、コミックスの発売もまた『鬼滅の刃』の壮大な世界観を構成する要素の一つであるという意識が共有されたに違いありません。そうなるとファンとしては最終巻発売というクライマックスに向けて、その日を最大級のイベントとするためにも、ネタバレなどもってのほかだったはず。この盛り上がりはファン全員で作り上げた偉大な成果と言っても過言ではないでしょう」(前出・サブカル系ライター)
周りに「鬼滅の刃」を話題にしている人がいたら、最終巻を読んだかどうかを確認してから感想戦に入る。そんな礼儀がファンの間には深く浸透しているようだ。
(金田麻有)