腰痛は、次の3つのタイプに分かれるという。
【1】腰にかかる過度の負担からくる(筋肉痛、腰の捻挫など医学的に病名が付かないことによる腰痛)。
【2】腰以外に原因がある(内臓疾患、うつ病、ストレスといった精神的なものが原因のケース)。
【3】腰そのものの異常が原因(骨盤や筋肉、腰椎などの異常)。
多くの腰痛が【3】で、さらにこのタイプは2つある。1つは、腰椎など骨の異常でレントゲンを撮るとわかる。もう1つは軟骨である椎間板の異常で、こちらはMRIを撮れば判明する。
「椎間板ヘルニア」「脊柱管狭窄症」「腰椎分離症」が主な疾患となり、医者から「年のせい」「長くつきあいましょう」といったキーワードが出てきたら、【3】のタイプだと思っていい。
「ただ中には『とりあえず湿布を出しましょうか』『加齢が原因なので、うまくつきあっていきましょう』『電気を当てに通ってください』など、患者さんからすると、わかったような、わからないような診断をする医者もいます。しかし、この言葉にダマされてはいけません。完治を目指す気がないから根本的な原因を究明せず、その場しのぎの言葉でごまかしている。緊急手術が必要でないレベルの患者さんなら、長くかかってもらえればそれだけ利益につながりますからね。まあ、僕みたいにハッキリと患者さんに言う医者は、全体の1割くらいですよ」
腰痛がラクになるか、悪化するかは医者しだい。腰痛にはマッサージや鍼灸、電気治療など、いくつかの治療方法があるため、医者の選択を間違うと、時間とお金を浪費し、いつまでも治らないというわけだ。
当然ながら、予防と対策も必要となる。
「特に男性に多いのが、ゴルフ場のグリーンでボールを拾う時、ぎっくり腰になりやすい。物を拾う時は、腰ではなく、膝を曲げることを意識してください。あと、デスクワークなど、同じ姿勢を長時間続けなくてはいけない人は、1時間に1回はうっ血した体を解放してあげること。ストレッチを挟んだり、トイレに立ったり、階段を昇り降りするのもいいでしょう」
さらに、就寝時にも注意することがある。
「低反発寝具はやめたほうがいいですね。体が沈み、同一姿勢の状態が長く続きますから。人間の体は力が分散するように背骨もカーブになっている。特に上を向いて寝ると、背骨はまっすぐになるからダメ。あおむけで寝るのは脊椎動物で、人間だけなんですよ」
腰痛持ちは「生活習慣の改善」から始める必要がありそうだ。
◆プロフィール 伊東 信久(いとう のぶひさ)1964年生まれ。整形外科医。神戸大学医学部、大阪市立大学大学院医学研究科卒業。伊東くりにっく院長。「Dr.イトー」の愛称を持つ。日本維新の会所属の衆議院議員でもある。