新型コロナウイルス感染防止で、石鹸やアルコールなどによる消毒の機会が頻繁になった。そこで増えているのが「手荒れ」や「手湿疹」などの皮膚トラブルだ。特に「手湿疹」は、消毒で皮膚の保湿が損なわれ、手を拭くことによる摩擦により皮膚の表面を傷つけられ、湿疹を引き起こす。
皮膚の表面の角質層には、水分を保ち肌に潤いをもたらすバリア機能があるが、アルコール消毒で皮膚に傷がつくと角質層がはがれ、肌が乾燥してしまうために発症するのだ。
手の洗いすぎやアルコール消毒で荒れた皮膚は、表面の保護バリアが壊れることで、外的刺激に弱くなるため、薬の塗布による速やかな完治が難しい。むしろ、今までは刺激にならなかった、水や紙による摩擦でも手が荒れるようになってしまうからやっかいだ。
「手湿疹」の治療は、ステロイド剤と、手のバリア機能を保護するための保湿剤の使用がメインとなる。皮膚に亀裂ができていたり、ヒリヒリする場合には、ステロイド剤が含まれるテープで保護することもある。
手はとかく、いろいろなものに触るため、皮膚を長時間保護する状態は難しい。対策としては、手洗いやアルコール消毒以外の場面で、できるだけ刺激を避けること。例えば、食器を洗う時や洗髪時などは、ゴム手袋を使用するといい。
ハンドクリームをこまめに塗ることも大切だ。最近では「バリアクリーム」と呼ばれる、皮膚の表面をコーティングするようなクリームもある。特にカサカサがひどい時には、尿素配合のクリームを選ぶのもいい。尿素は硬くなった角質層を柔らかくし、新しい細胞に入れ代わる助けをしてくれるからだ。
ただし、クリームを頻繁に使用することで悪化するケースもあるため、ひどい場合には皮膚科の受診が必要だ。
田幸和歌子(たこう・わかこ):医療ライター、1973年、長野県生まれ。出版社、広告制作会社を経てフリーに。夕刊フジなどで健康・医療関係の取材・執筆を行うほか、エンタメ系記事の執筆も多数。主な著書に「大切なことはみんな朝ドラが教えてくれた」(太田出版)など。