元衆院議員の宮崎謙介氏が足掛け5年の議員生活の経験をもとに、政治家ウオッチングやオフレコ話、政治にまつわる話を適度な塩梅で、わかりやすく「濃口政治評論家」として直言!
いつどこから、思いがけず刃が飛んでくるかわからない世の中になりました。覚えのない人が背後からグサッという危険もあれば、隣で仲むつまじく話していた人がいきなり急変して攻撃してくる。僕も最近、グサグサやられましたが、ホントに世知辛い時代です。
11月24日に行われた茂木外相と中国の王毅外相との会談は、まさにそうでしたね。王氏は会談中、にこやかに日本への感謝やビジネスの再開、日中関係の構築について前向きに話していたのに、最後に般若の顔に豹変。共同記者発表で、
「日本の漁船が絶え間なく釣魚島(尖閣諸島・魚釣島)の周辺水域に入る事態が発生している。我々は引き続き、自国の主権を守っていく。事態を複雑化させる行動を(日本は)避けるべきだ」
などと語り、急にマウントを取り始めたのです。そこで茂木氏は呆然。何も反論せず、中国にしてやられた感が残りました。ネットでもすぐさま「ヘラヘラして終わった」など批判の嵐。実はあれ、中国語の同時通訳がすぐに伝えてくれず、何を言われたかわからないまま終わったせいで、ヘラヘラしているように見えたんだとか。とはいえ、自民党部会でも「日本が弱腰との印象を与えた」「沽券に関わる」との意見が出ているようです。
そもそも尖閣諸島は12年に正式に国有化された日本の領土ですが、今もなお、中国は争いを仕掛けてきます。今年はコロナのどさくさに紛れてか、春節(旧正月)と台風時を除くと、ほぼ毎日、周辺海域をウロウロ。「ただ威嚇するだけで、実際に取られることはないのでは」と高をくくっていましたが、尖閣諸島を中国に取られてしまう懸念も出てきます。「取られたっていい」という国民もいますが、尖閣を失えば他の領土にも刃が飛んできて、なし崩しです。
これは他者による織り込み済みのストーリーなのかもしれません。よく永田町で繰り返される、派閥内の足の引っ張り合い。少しでも派閥の発言権を落とす差し金という見方もあります。安倍前総理の桜の会の資金問題もそう。最大派閥の細田派=実質安倍派の権威を貶めるために、ここにきて特捜部と組んで安倍さんを陥れた、と話す評論家もいますし、そうなると次は竹下派。力を持っている竹下派に汚名を着せるために、対中国のレクチャー会議で「茂木外相はいつもどおりで。外交上のルールに従って対応すれば大丈夫ですよ」と。そう誰かが指南したのではないか、と読んでいる永田町の先輩がいました。
茂木さんって自民党内部ではすごく強気で、官僚に対しても厳しいことで有名なんです。なのになぜ‥‥。外務大臣まで上り詰めたのに、この失態。ルールが大事というのであれば、せめて最初から目で闘う姿勢を示してほしかったですよね。中国は危険だと、政治に携わっていない国民ですらわかっているのに。
河野太郎大臣なら、少なくとも仁王立ちでにらみつけていたのではないでしょうか。中国にやられっぱなしにならないよう、これまでさんざん国の偉い人たちは画策しているはずなのに、どうして同じような場面で引っ掛かっちゃうんですかね。もう同じ過ちを繰り返してほしくない。あっ。はい、僕もです‥‥。
宮崎謙介(みやざき・けんすけ):1981年生まれ、東京出身。早稲田大学を卒業後、日本生命などを経て、12年に衆議院議員に。16年に辞職し、経営コンサルタントや「サンデー・ジャポン」(TBS系)などに出演。「バラいろダンディ」(TOKYO MX)ではレギュラーMCを務める。