テリー そんなに過酷なのに、よく10年以上も続きましたよね。
東海林 女だからできたのもあったでしょうね。例えば事件現場で血痕を見ると男性リポーターはショックを受けたりして、だいたいやめていくんです。そこは女のほうが強いんですよ。
テリー あぁ、確かに。僕も血痕とかは見られないな。
東海林 あとはあの頃、元気だったんですよ。この先もうちょっと、もうちょっと取材しようって。当時は1%でも視聴率を上げてやろうって、各局が戦ってましたから。
テリー やっぱり、そのへんは苛烈だったんですか。
東海林 ある時、私たちだけがつかんだネタがあって、現場に向かって車で走ってたら、後ろから日テレの車がついてくるんですよ。「え、わかるはずないのに」って思ったら、あの頃、日テレさん、無線を持ってたの。
テリー 盗聴してたんだ。
東海林 そういう、どこにも負けちゃいけないみたいな雰囲気はありましたよね。
テリー 数多くの事件を取材されたと思うんですが、中でも印象に残っている事件って何ですか。
東海林 私が今でもよく覚えてるのは「埼玉愛犬家連続殺人事件」ってありましたでしょ。
テリー ありましたね。もう20年以上前かな(編集部注:1993年の事件)。
東海林 ペットショップを経営する元夫婦の2人が、犬は殺すわ、飲み物に薬物を入れて人は殺すわ、すごい事件だったんですよ。それで2人が犯人に違いないんだけど、決定的な証拠がなくて逮捕されていない時に、私、取材でそのペットショップに行ったんです。そしたら、男のほうが「ああ、どうも。東海林さん、ドリンク飲む?」って。
テリー 怖いなぁ。
東海林 そうなんですよ。もうその時、マスコミにはドリンクに毒を入れて殺したっていう情報があって。「えっ?」って躊躇してたら、男が「入れてないよ」って言ったの。
テリー 飲んだの?
東海林 飲んだ。
テリー 勇気あるなぁ!
東海林 その男も自分たちが逮捕されるなんて思ってない時だから自信満々ですよ。私、逮捕された人間と直接話をしたのはそのケースだけだったから、よく覚えてるんです。
テリー いやぁ、でも危険な仕事でもありますよね。もうやめようとか思ったことはないんですか。
東海林 それはなかったですけど、「3時のあなた」を始めた時、司会の森光子さんがなかなか認めてくれなくて、ツラかったですね。
テリー へぇ。どうして?
東海林 意地悪とか、そういうんじゃないんですよ。たぶんね、あの人は40歳を過ぎて「放浪記」の(脚本の)菊田一夫さんに認められて出てきた人でしょ。そういう苦労があるから、めったに人を認めないところがあったと思うんです。
テリー そうなんだ。
東海林 「3時のあなた」って、朝、大きなテーブルで打ち合わせをやるんですね。で、森さんが真ん中に座るんですけど、私にだけ目を合わせてくれないんですよ。作家さんだとか他の人には目を合わせても、私だけ素通りで。私、その時だけはやめようと思って、担当ディレクターに言ったら「かまわないからやれ」って。
テリー 言うでしょうね。
東海林 それで、ずっと続けて大きなインタビューが取れたりするようになったら、ようやく「よくやったわね」って声をかけてくださるようになって。「東山(紀之)君がね」なんて話もしてくれるようになっていったんですよ。