冬の東京開催が終わって中山開催を迎えると、何やら春を告げられたような気がする。クラシックはもうそこまで迫ってきており、まだ降雪の心配が抜けきらない時期ではあるが、気分が高揚してくるのである。
中山第1週目のメインは伝統ある中山記念。毎年GI勝ち馬、またはそれに準じる馬が出走してくることで重厚な重賞として知られるが、4月初旬にGI大阪杯(中山記念の1着馬に優先出走権が与えられる)が組まれた17年以降、重みはさらに増した感がある。
昨年の覇者ダノンキングリー(大阪杯は3着)をはじめ、今年もなかなかの顔ぶれで、見応えある一戦になること請け合いだ。
まずは過去のデータを見てみよう。03年に馬単が導入されて以降、これまでの18年間、その馬単での万馬券は3回(馬連2回)。一見すると堅く収まっているかの印象を受けるが、1番人気馬は6勝(2着1回)、2番人気馬は4勝(2着3回)で、1、2番人気馬のワンツー決着は1回のみ。意外や簡単に収まることが少なく、中穴傾向の重賞で簡単ではない。
年齢的には生きのいい4歳馬が7勝(2着5回)と活躍しており、うち1勝が牝馬。出走頭数が少ない割に牝馬の連対が目立っていることは、頭に入れておいて損はないだろう。
改めて顔ぶれを見てみる。東西の金杯を制したヒシイグアスとケイデンスコールが出走してくる。ともに5歳馬で充実ぶりはかなりのもの。人気の一角であることは疑いようがない。
しかし、穴党として最も期待を寄せたいのは6歳馬のフランツである。データでは4歳馬が最も勝っているが、2着馬に目を向けると6歳馬が一番。3勝、2着7回と連対率はかなり高いのだ。
フランツは2歳から3歳初めまでクラシック候補の1頭に数えられ、将来を嘱望されもした存在。しかし、ひ弱な体質が災いして休み休み使わざるを得ず、期待に反して伸び悩んだまま、ここまできてしまった。それでも走るたびにひ弱さは解消され、遅ればせながら、ようやく持てる力を発揮できるようになってきた。
昨年11月のアンドロメダS(12着)のあと、ひと息入れて立て直した前走の白富士Sは、見せ場たっぷりに勝ち馬と半馬身差の3着に頑張った。この時、馬体重がプラス14キロも増えていたことを思うと、知らないうちに大きく成長したに違いない。
この中間も順調そのもの。前走後はここを目標に調整されてきただけに、とにかく仕上がり状態はいい。1週前の追い切りの動きは軽快かつリズミカル。臨戦態勢が整い、前走以上の状態とみてよさそうだ。であるなら、相手がそろっているここでも力は通用していい。
中山コースは初めてになるが、器用さが持ち味でレースセンスのある馬。むしろ、小回りの中山は合っているとみていいのではないだろうか。
ヴィクトリー(皐月賞)、フサイチコンコルド(ダービー)など近親、一族に活躍馬が多数いる血筋。まだ良化の余地は十分あることを思えば、強敵相手のここでも勝ち負けになって不思議はない。