東京、京都に主戦場が移り、秋のGI戦線が目前に迫ってきた。
今週、東西のメインとして行われるのは、ともに天皇賞・秋の前哨戦(1着馬に優先出走権が与えられる)。東のそれは毎日王冠。本番より1ハロン距離が短いだけで舞台は同じとあって、毎年顔ぶれは豪華だ。
頭数は少ないが、今年もなかなかで、GI勝ち馬が5頭、それに準じる僅差2着馬が2頭。本番を前にどんな競馬が見られるのか、興味は尽きない。
まずはデータをひもといてみよう。
02年に馬単が導入されて以降、これまでの17年間、その馬単での万馬券は6回(馬連では3回)。この間、1番人気馬は6勝(2着2回)、2番人気馬は2勝(2着2回)。大きく荒れることは少ないが、1、2番人気馬のワンツー決着は2回のみで、必ずしも本命サイドで堅く収まるわけではない。獲得賞金等から盾の出走権をすでに得ている馬は、余裕残しの状態で出走してくるということだろう。
しかし今回はマイラーとおぼしき馬も多い。つまり盾が狙いではなく、その後のGIマイルCSを目指している馬もいるわけだ。距離は1800メートル。本番が2000メートルなので、マイル戦をベストとしているマイラーを狙うべきか、距離が延びていい馬に目をつけるべきか、そこの選択が一つのカギと言えそうだ。
また、ここ何年かは3歳馬の活躍が目立ってきている。古馬より斤量が軽いこともあるが、春のクラシック戦線で上位争いを演じてきた肩書は小さくない。
今年は皐月賞アタマ差3着、ダービーはクビ差2着のダノンキングリーで、東京コースを〈2 1 0 0〉と得意にしているとあって、穴党としても無論のこと軽く見るわけにはいかない。
とはいえ、同馬を本命視するわけにはいかない。穴党として狙ってみたいのは、ギベオンだ。
こちらは好結果を出せば盾を目指すことになるが、強みは昨年のGINHKマイルCでクビ差2着、GIII中日新聞杯(芝2000メートル)で勝利したように、距離の融通性がある点だ。
しかも左回りがスムーズ。だから早くからここに目標を置き、仕上げられてきた。前走の鳴尾記念4着のあとは放牧でリフレッシュ。乗り込み量も豊富で、1週前の追い切りでは併せた相手に遅れはしたが、長めから追いかけたからで、しまいはしっかりと伸び、迫力満点だった。
「久々を感じさせない好仕上がり。力を出せる状態」
と、藤原英調教師も胸を張るほどだ。
〈1 1 0 0〉と相性のいい東京が舞台で、展開に左右されない自在な脚質も魅力。母はGI2勝馬という血統でもあり、強敵相手でも断じてヒケは取らないとみている。期待したい。
西の京都大賞典は、クリンチャーを推奨したい。
昨秋、フランスに遠征。結果はフォワ賞6着(6頭立て)、凱旋門賞17着とさっぱりで、帰国してからもさんざんな成績。すっかり評価を落とした格好だが、それでも使われつつ調子はよくなっている。
前走の新潟記念は12着に敗れたものの、本来の積極的な戦法で直線半ばまで頑張り、久々にこの馬らしさを見せてくれた。
この中間も順調で、1週前の追い切りも実にリズミカルだった。完全復活とはいかないものの、本来の姿を取り戻してきたことは確かだ。ならば期待していいのではないか。
今回は〈2 1 1 1〉と得意にしている京都が舞台。前走のような競馬ができればチャンスがあっていい。