CNNが全世界に向けて「ヒマラヤの雪男、イエティのDNAが古代のホッキョクグマのものと一致した」、と報道した。イエティといえば数々の物的証拠が残されているにもかかわらず秘密のベールに包まれ、1世紀以上も正体が論じられている、UMA=未確認生物の代表格だ。今、あらためてその謎に迫る。
10月18日、CNNが「ヒマラヤの雪男の謎がついに解明?」というニュースを報道した。記事によると、
「イギリスの遺伝学者が、ヒマラヤ山脈で採取された雪男“イエティ”とされる動物2頭の毛を調べた結果、古代のホッキョクグマとDNAが一致した」
というのだ。
調査を担当したのは、英国・オックスフォード大学の遺伝学教授ブライアン・サイクス氏。サンプルとしたのは2個の試料で、インド・カシミール地方のラダックで40年前に射殺された“イエティ”とされる動物の毛皮と、ブータンで10年前に発見された毛皮だ。
そのDNAを調査したところ、ノルウェー北端のスバールバルで見つかった4万~12万年前のホッキョクグマの顎の骨のものと完全に一致したというわけだ。その確率、なんと100%!
これまでイエティに関する報道は幾度も世間をにぎわせてきた。記憶に新しいのが2008年「日本の調査隊がネパール・ダウラギリ山群でイエティの足跡を発見した」というニュースだ。その足跡写真と調査隊の証言には説得力があり、日本はもちろん世界中が騒然となった。
これらの経緯からもイエティの存在自体が広く愛されていることがわかる。時には小説や映画の表題にも起用されるイエティだが、そのいずれもが、「雪男」という表現からも見られるように、イエティ=霊長類(人に近い種の類人猿)の認識から発せられたものだ。それがここにきて、イエティ=クマだったというのか‥‥。
“イエティ”は、どのように語り継がれてきたのか、その歴史をひもといてみよう。
発端は1951年11月、イギリスの登山家エリック・シプトンが発表した足跡の写真だった。撮影場所はエベレストの北面登山ルート、標高6000メートルに位置するメンルン氷河上。大きさは長さ45センチ、幅32センチ、指は5本あり、2本は大きく、他の3本は小さくくっついており、かかとは平らだった。もちろん、それまでも“イエティ”なる謎の生物の存在はささやかれていた。しかしあまりにも奇妙で鮮明なこの写真は、衝撃をもって迎えられた。
そして、この数枚がエポック・メーキングとなり、世界中で「イエティブーム」が勃発。各国がこぞって本格的なイエティの調査と捜索を行うようになった。広いヒマラヤのあちこちで毛皮をはじめとするイエティの存在の物的証拠が発見されるようになると、熱は最高潮に達した。
その最たるものが1954年に英国・デイリー・メール紙が組織した探検隊が、ヒマラヤの僧院で発見した「イエティの頭皮」だろう。ヒマラヤ=イエティという認識は確固たるものとなった。
その正体について、有力視されたのが先にも述べた大型の霊長類説だ。調査結果をもとにゴリラに似た想像図が描かれ、「ネアンデルタール人ではないか」「いや、ギガントピテクス(新生代第3期に出現した大型類人猿)だ」などと、登山家や探検家はもちろん、UMA(未確認生物)研究家からも熱い注目を集めるようになった。