テリー ネタの作り方は、昔と比べて何が変わったの?
渡辺 最初の頃はボケたらツッコむみたいな、よくある形の漫才を、ちゃんと紙に書いてやってたんですけど、あんまりウケてなかったんですね。で、何年かして、同じ事務所のハリウッドザコシショウに「長谷川はバカなんだから台本なんか覚えさせても意味がない。もっとバカを前面に押し出していけ」みたいなことを言われたんですよ。
テリー 長谷川さんってバカなの?
長谷川 自覚はないんですけどね。自分ではそれが当たり前だと思って、今まで生きてきたわけですから。
テリー そりゃ、そうだ。で、どのへんがバカなの?
渡辺 もうすぐ50歳なのに初めて経験することが多くて、ほんとに何も知らないんですよ。去年までリゾットも知らなかったですし。
長谷川 食べたことないからしょうがないですよ。
渡辺 あとはネタ中に動きをやらせると、なんか古くて「若者の動きを取り入れていこう」って言ったら“前ならえ”をしたり。そんなの若者と関係ないじゃないですか、学校で覚えていくことで。ほんと、そういうことが多いんですよね。
テリー あぁ。でも、それって今やってるネタに近い感じだよね。つまり、長谷川さんのそういうところを前面に出す形に変えたら、少しずつウケるようになってきたということだ。
渡辺 はい。それは大きかったですね。
テリー また知名度が上がると、ウケ方も変わるしね。
渡辺 もう全然違いますね。
長谷川 僕らのことを知らない時は、お客さんの態勢もこんなんなんですよ(とイスにふんぞり返る)。でも、今は舞台に出ただけで前のめりなんで、すごくやりやすいです。
渡辺 特にM-1の後はそうですね。まして、僕らおじさんですから。以前は若い子らのライブにばっかり出てたんで、極端な話、見てもくれないんですよ。
長谷川 単純に「生理的に受け付けない」とか言われてましたから。
テリー 今の20代の芸人さんはイケメンで高学歴が多いからね。そういう芸人を見に来た客からすると、「なんなの、この人たち」なんだろうな。
長谷川 たぶん、一瞬パニックになるんでしょうね。若いイケメンが続いた後に、いきなり僕らが出てきたら。
渡辺 急に「親」みたいなのがね。
長谷川 そうそう。「あれ、ここ、どこなんだろう?」みたいな。
テリー とはいえ、そんな客も笑わせなきゃいけないわけじゃない。そういう時はどうしてたの?
長谷川 僕は第一声で、メチャクチャ大きい声を出して惹きつけるみたいのはやってましたけどね。
テリー だから、ネタの第一声は「こーんにーちはー」なんだ。
渡辺 僕らが思ってたことは3つだけで、「明るく、楽しく、元気よく」なんです。どんな場でも、深く考えず、これだけでやってきましたね。
テリー それでもスマホをイジってる客とかいるでしょ。
渡辺 います。でも、うちは長谷川の「こんにちは」で見てもらえなかったら、もうどうしようもないですね。そのお客さんはあきらめて、あとはスマホをイジれないように、できるだけ大きな声でジャマするだけです(笑)。
長谷川 とりあえず大きな声で一瞬パッと向かせられたら、あとはいかに食いつかせるかですね。変な顔したり、変な言い方したり、とにかく原始的なやり方で、興味を持ってもらえるようにしてます。