昨秋に公開され、今、全国的に再上映が相次いでいる加藤雅也(58)主演の映画「彼女は夢で踊る」(時川英之監督)。その理由は、舞台となった中国地方で唯一の踊り子が肌を見せ舞うショーを行う劇場「広島第一劇場」が、5月20日の営業を最後に閉館、46年の歴史に幕を閉じることが決まったからだ。社会部記者が話す。
「オープンしたのは1975年8月。現在の社長が2代目として経営を引き継いだ85年当時は全国に200件以上の劇場があり『広島第一劇場』も1日数百人が列を作ることもありました。しかし、時代の流れとともに客が減り、ビルの老朽化なども加わって、ついに閉館が決まりました。同じく5月で閉館を予定していた九州最後の劇場『A級小倉劇場』は存続の方向で決まりましたが、広島は6月に建物が取り壊され、跡地にはホテルが建設されるそうです」
小倉のように広島第一劇場もこれまで何度か閉館の危機を乗り越えてきた。その模様を描いた作品が映画「彼女は夢で踊る」だ。映画ライターが話す。
「閉館の危機が迫る老舗劇場の社長が踊り子との秘密の恋を思い出す様を描くラブストーリーです。加藤雅也が2代目社長を演じ、その青年期を犬飼貴丈(26)、ヒロインの踊り子を岡村いずみ(31)が演じているほか、中国放送のアナウンサーでこの作品の企画・プロデュースも担当している横山雄二アナ(54)や、現役の踊り子・矢沢ようこ(44)もキャストに名を連ねています。近年では服を脱ぎ舞う踊り子たちのショーが、アートやエンターテイメントとして見直されていて『スト女』と呼ばれる女性客が1~2割を占めているそうですが、映画館も女性客は多いですね。まさに『女性の美』をみごとに表現した作品ですね」
だからこそ、全国的に再上映が相次いでいると言えるのだが、芸能人たちの評価もかなり高い。
「先月のラジオ番組でタレントの北野誠(62)が『幻想的な映像美がすごい』と絶賛すれば、水道橋博士(58)も自身も、浅草の劇場とは縁があることを前置きし『踊り子さんのこととかよくわかるんですが、これ、大傑作の映画ですよ』と話していました。コロナ禍で劇場に行けない人は『Amazon Prime Video』の配信で観ることも可能ですし、閉館後の5月22日には『広島第一劇場』で映画の上映や『天空の舞姫・ヨーコ』こと、矢沢ようこの特別パフォーマンスが披露される予定です」(前出・映画ライター)
踊り子は夢を演じて、客はそれぞれの夢を見る──。劇中でそう表現されていたが、またひとつ夢を見る場所が減ってしまうのは、寂しいかぎりだ。