「20年間の現役生活、一言で言え言うたらちょっと難しいけど、どうやったと訊かれたら、不安との戦いやったですね…」
こう関西弁で自身の半生を振り返ったのは、近鉄で活躍した元プロ野球選手・鈴木啓示氏。日本プロ野球名球会が運営する公式のYouTubeチャンネル〈日本プロ野球名球会チャンネル〉の、6月13日付け投稿回〈プロの厳しさを知った金田正一の言葉とは!?【最後の300勝投手 鈴木啓示】<日本プロ野球名球会>〉に出演してのことだ。
鈴木氏は、シーズン20勝以上の勝ち星を挙げること8度、プロ通算317勝で日本プロ野球歴代4位となる偉業の持ち主。最多奪三振のタイトルにおいては8度も輝いているが、そのうち、1967年から72年まで6年連続で奪取しており、これは江夏豊氏に並ぶ最長タイ記録である。
それほどの実績を残しつつ、「毎日不安で、また今日負けるんちゃうか…」といった不安に襲われていたそうだが、それゆえに「練習したんですよ、自信なんてまったくなかったですよ。(中略)人が遊んでる時は練習やってって感じやったからね」と、未だにパチンコも麻雀も知らないと白い歯を見せた鈴木氏。
引退後、世界のホームラン王・王貞治氏と面会した時のこと、鈴木氏が「現役時代どんな気持ちでした?」と訊ねると、「毎日不安だった。不安だから練習したんだよ」との返答を得て、「王さんですらそれか!」と驚くとともに、自身の考えも間違いではなかったと再認識できたのだとか。
一線で活躍する芸能人ほど、明日の我が身の不安を覚え、意外にも鍛錬に余念がないと聞く。野球人も同じようで、「不安」を糧にレジェンドに駆け上った鈴木氏から興味深い話が拝聴できる示唆に富んだ回であった。
(ユーチューブライター・所ひで)