今週は2歳女王決定戦「阪神ジュベナイルF」が行われる。人気を集めるのは前走・新潟2歳Sで豪脚を披露したハープスター。現在2戦2勝の良血馬。ここを勝てば牝馬クラシック戦線の中心になることは間違いない。
ハープスターが絶対視されている。新馬─新潟2歳Sを連覇。ともに他馬を寄せつけぬ圧倒的な勝利。この新潟2歳Sで2着だったイスラボニータは、のちに東スポ杯2歳Sを制し、5着のマーブルカテドラルはアルテミスSを完勝したのだから、相手が弱かったからできた芸当でなかったことは明らかだ。
このまま突っ走って来年の牝馬クラシックを総ナメすると見る向きもあるが、なるほど、柔らかな身のこなしで、息の長い強烈な末脚。相当な器であることは、走りから見て確かだ。ここを期待どおり勝つようなら、そのチャンスは小さくないだろう。
血統の裏付けも、また十分。祖母ベガは桜花賞、オークスを勝ち、叔父にアドマイヤベガ(ダービー)、アドマイヤドン(GI7勝)がいる良血。2歳女王の座にふさわしい馬である。
ならば馬券的には、この馬を主力に2着探しの一戦ということになるが、これでは穴党としてはおもしろくあるまい。
不安点はないのだろうか。重箱の隅をようじでつつくマネかも知れぬが、やはり新潟2歳S勝ち以降、3カ月半実戦から遠ざかっているのは気になるところだ。陣営にとっては予定の行動であり、じっくりと稽古を積んできて調整に抜かりはないと聞く。
しかし、日を追って成長するこの時期、思惑と違って重め残りで出走ということはないのだろうか。久々だと調教のみでは激しい実戦に耐えられるだけの体に仕上がってない場合が往々にしてある。GIともなると甘くはないと思う。それと、道悪になった場合だ。キレイな走りをする馬で、しまい勝負型。決して上手とは思えないからだ。
いずれにせよ、穴党としてはハープスターから入るわけにはいかない。
06年から外回りコースを使用して行われるようになり、ウオッカ、トールポピー、ブエナビスタ、アパパネとクラシックとの結び付きが強くはなったが、それでいて過去10年で1番人気馬が勝ったのは、わずか2頭。昨年は馬単配当が6万2100円だった。決して“絶対”ではないGIなのだ。
イチオシしたいのは、マジックタイムである。ハープスターと同じ大手・ノーザンファームの生産馬だ。そしてこちらも強烈な末脚を武器にしている。
前走のきんもくせい特別は、逃げた馬が2着に粘る緩い流れ。それを道中最後方につけていたこの馬が、最速の上がり脚で真一文字に差し切ってみせたのだ。かなりの能力を秘めた馬と言っていいだろう。
時計の1分36秒1(芝1600メートル)は平凡に思えるが、前日の雨で午前中まで芝はやや重。平均して1.2秒遅かったことから、この走破時計を気にする必要はない。それに、一息入っていたあとで体重が前走比10キロ増と重め残り。まだまだ上がり目があることは明らかだ。
この中間は馬体が締まって実にいい雰囲気にあり、1週前の追い切りは軽快そのもの。中川調教師が「落ち着き払ってさらに良化。このぶんなら‥‥」と、目を細めて期待のほどを口にするぐらいだ。
ハープスターほどではないが、こちらも血統は悪くない。母は、オークスTRフローラS2着で、母系は欧州の一流血脈。こちらは走りっぷりから道悪は問題なさそう。逆転があって不思議はない。
500万条件から7頭(3頭除外)出走できる。1勝クラスでも魅力的穴馬は少なくない。タイセイララバイ、トーセンシルエット、ヤマニンアリエッタなどは、そのクチ。特にトーセンシルエットだ。小兵だが、勝負強く、前走の京王杯2歳S(5着)の内容は悪くなかった。女傑エアグルーヴが近親にいる良血。要注意だ。
◆アサヒ芸能12/3発売(12/12号)より