法外な利息で、支払いが遅れれば家族や職場に容赦なく追い込みをかける闇金業者。もちろん出資法で、その存在は違法とされているものの、いまだに“必要悪”として跋扈〈ばっこ〉しているのはなぜか。黒田氏が続ける。
「結局、それだけカネに困っているお客さんが多いということですよ。3万円貸して1万円利息つくなんてとてもじゃないけど、僕でさえ借りたくない。それに僕のところは受け付けから、裏取り(住所や身内の確認)が30分程度でできる。これだと相手に考える隙を与えないで済む。よく警察に届けられないのか聞かれますけど、実際に借りバクするのはほんの一握り。中には、“スッ飛び”といって、返済できずに開き直って返済拒否する場合もありますが、9割はキチンと返済していますね」
○月×日 20代のお客さん。またもや保険屋さんだ。AやNは、厳しいノルマが課せられているのか。それにしても20代が多い。今日のお客さんは両親が健在。60代だとまだ仕事しているか微妙だな。50代だとよかったんだけど。
20代の借り主の場合には、両親の居場所を確認するのが鉄則だという。
○月×日 多重債務者との会話は長くなる。今日も金融業者のアドバイスをした。「この会社なら別に返さなくていいよ。でも多少の傷はあるけどいい」とか、まるで金融相談だ。でもおかげで一本化ができた。真面目なお客さんだが、今後も回収日は要注意だ。
なぜ、闇金業者が、同業者の取り立て状況まで、借り主に教えるのか。それには、闇金業者の熾烈なサバイバル競争があるという。
「かつてはシステム金融といって複数の業者が、入れ代わり立ち代わり債務者の回収日に電話して、借り換えをさせて、しゃぶり尽くしていたんですけど、今はそういう手法は通用しなくなりつつある。そこで業者を一本化して、なるべく集中的に取り立てられるようにしむけるんです。そのためには他の業者も追い落とすし、多重債務者も一本化できれば潰れずに少しずつでも返済できますからね。リピートのお客さんがいちばん効率がいいんです。でもその一方で、別の金融からも借りてたらルール違反と言ってペナルティを課したりします」(黒田氏)
現在、200万人いると言われる多重債務者。ましてや一流企業の社員ならより高いモラルが求められるにもかかわらず、闇金に頼らざるをえない現実があるのも実情だ。闇金は「現代の駆け込み寺」なのかもしれない。