黒田氏が社長を務める闇金では、インターネットで客を集め、貸し付けている。顧客は全国に及ぶが、ネットと携帯電話での審査で、最初は5万円まで。返済が滞らなければ、徐々に限度額をアップして、優良な顧客として囲い込むという作戦で、リスクが最小限で済むように細心の注意を払っているという。
○月×日 客をうまく誘導することに成功。最初は30万という金額を求めてきたが、「最初は少ない金額で特別な審査期間という条件を持たせてもらってます」と言って3万円貸したら納得した。そこで利息の話をしてもOK。どうやら印象的にも弱そうだし、2割じゃなくて3割でも大丈夫そうだな。
一般的に闇金の金利は「トイチ(10日で1割)」と言われているが、実際には、相手の声や収入や借り入れの状況などを聞いて、直感的に金利を決めるケースがほとんど。
「仮に5万円を貸し付けて相手によっては1週間で3万円の利息を取ることもある。前に勤めていた闇金は『トーゴー(10日で5割)は切るな』と言われていました。貸付期間も10日とか1週間ではなく、借り主の都合に合わせて、2週間とか3週間とかかなり余裕を持たせていますね」(黒田氏)
○月×日 海上自衛隊のお客さんが来た。かなり変わった事情だ。「船に乗ってしまうと電話が自由に使えない」という。裏も取ったし、とりあえず貸してみたが、どうだろうか? とりあえず最高額の5万円を投げてみたが‥‥。
しかし、約束の返済日が来てもこの借り主からは連絡がなかったという。
「結局、海上自衛隊の、そいつが所属している船の上司だとか、内線番号を知っていたので、内線を通して連絡を続けてみたんです。『こういった事情だから何とかしてくれませんか』と言っても、同僚や自衛隊のヤツは『本人同士の問題だから知りません』と言われちゃって。直接、船にも内線を回してもらったりしたんですが、みんなで囲っちゃって。本人出すこともせず、返させる努力もしてくれず。こっちは泣き寝入りするしかなかったですね」
闇金業者が「泣き寝入り」とは、おかしな言いぐさだが、金銭を巡る「駆け引き」は法の網の外で、日々繰り広げられているのだ。