今、被災地でいちばん深刻な被害が出ているのが、闇金だという。国の方針により、融資もままならない被災者にとっては、“天使”でもあり、その後は“悪魔”にもなる危険な存在。そんな、被災者に群がる闇金の実態を当事者が赤裸々に語った。
僕は、都内で仕事をしているんですけど、今は被災地からの問い合わせがいちばん多いですね。でも、返す手段が薄いので、なるべく貸さないようにしているんです。たぶん、一般的に今の闇金のほとんどは、被災地からの電話が多いと思いますよ。
1位福島県
2位岩手県
3位宮城県
の順番だと思います。ただ、うちの店は今ではほとんど貸さないようにしています。被災者は条件が悪すぎます。仕事もないし、被災地へ派遣されている作業員の人も問い合わせが多い。仮設住宅の人も多い。
借りたいという人の大半は給料日までの生活費。みんな、贅沢をしたからとかではないんです。
落ち着いた口調で語りだしたのは、現在30代の栗本源太郎さん=仮名=。これまで長年、都内で闇金を含める金融関係の仕事を10年以上続けてきた。しかし、震災以降、借り手はもっぱら東北地方の被災地からのSOSになってしまっているという。
まず、普通の金融機関は金を貸してくれないですよ。たぶん、「東北」でなおかつ被災者ってだけで、パスされちゃうんだと思います。だからオレらみたいな暴利な金利を取るいわゆる闇金「スピード出資」にしかたなく電話してくるんですよね。みんな口をそろえて言いますよ。
「あと何日かあとにはお金が入る。それまでのつなぎがなければ家族が生活できない」
って。みんな小口(小額)で1万、2万円とかの小さな金額ですよ。正直、うちらみたいなのがいうのもヘンですけど、国が被災者を見捨てすぎ。現実を甘く見すぎなんですよ。明日、食べるものに苦労してる人がどれだけ多いか。家がなくなって仕事がなくなって、でも、ローンという借金だけが残って‥‥。
実は、今の闇金業者は過当競争になっていて、借りるほうも知恵つけてるから平気で「飛ぶ」(行方をくらませる)んです。だから貸すほうもリスキーです。
こっちは普通に返済の期限の話をしてるのに、被災者でも素人ほど、すぐに「警察」の言葉を出す。こっちは信用してすぐにお金を貸すんですけど、何か詐欺よりタチが悪い。ボランティアでやってるんじゃないんだから。完璧に人間不信ですよね。
でも、ちゃんと返済してくれた人たちは、最後にみんな「ありがとう」と言ってくれるんです。オレら闇金業者ですよ。そんなヤツらに感謝の言葉をくれる。まぁ、その感謝の言葉がなければこんな仕事やっていけないですよ。
あと最近目立つのが、「お金を借りる必要がないのに電話してくる」人たち。要は、寂しくて誰かと話をしたいんですよ。被災で家族を亡くした方、高齢者が多いですかね。誰かと話をしたいから、悩みを聞いてほしい。ついでにお金も借りる。もう事務所はテレクラ状態。いや、お金のかからないホストかも(笑)。一度話をすると相手は「孫」「息子」「彼氏」扱いですよ(苦笑)。
顔を合わせたこともなく、話をしただけなのに、中には「従業員にさせてください」とか「息子を雇ってくれないか」って‥‥。完済してもずっと電話をかけてくる。「東京は物価が高いでしょう」「ちゃんと野菜食べてるかい?」「何もお礼できないからせめてうちで採れたものを」とかで、産地の野菜、果物とかを送ってくださる人も多いですね。
不景気な闇金業界で今の収入源になってるのは「同業者から引っ張る」ことです。
はたから見たらみんな同じに見えると思うんですけど、オレらの事務所はホントに良心的な闇金なんですよ。お客さんから「あそこはひどい」って業者を聞いて情報をつかみ、そこからお金を借りて踏み倒すんです。
いちばん堅いのは被災地で働いている「風俗嬢」「キャバ嬢」になりきることですね。被災地の歓楽街ではいまだにバブルで儲かっている場所も多い。日払いで高給取り。だから審査が通りやすい。昔から闇金の顧客の大半は水、風の女の子ですから。女性の従業員はもうその手のプロです。働いたこともないのに(笑)。
同業だから手のうちは何パターンも知ってる。強いところも弱いところも。詐欺会社から詐欺してるんですよね。悪質なところはそれを承知で短期で勝負(儲け)かけてるから、相手の弱いところをついていくんです。闇金の儲けは把握しているので、どれくらいまでいけるか、どこがボーダーラインか。そういうところは自分の勘ですね。
被災地の人たちからの金利で儲けるお金と、闇金から取るお金も一緒の「お金」ですから。罪悪感の重さで言うと、詐欺のヤツらから取るほうが気持ち的には軽いですよ。被災地の人と話してると、
「タコとか魚介類を取ると人間の髪の毛が大量に入ってる」
そんな話、序の口です。やるせないですよ。
ウチらのほうが、東京にいますけど、被災地の現実知ってるんじゃないですかね。