福島県で異変が起きている。市民の行政に対する不満が爆発、郡山市、いわき市、福島市の市長選で現職市長が相次いで落選したのだ。そこで県民1000人への緊急アンケートを実施すると、マグマのごとく煮えたぎる怒りの声があふれ出した。
今月17日に行われた福島市長選で、4選を目指す現職にダブルスコアで圧勝したのは無所属の新人で元環境省職員・小林香〈かおる〉氏(54)だった。福島県では4月に郡山市、9月にいわき市で現職が落選しており、3大都市で連続して市長交代劇が起きたことになる。小林市長は支持を得た理由をこう語る。
「市民選挙をやり、市民の皆さんとの対話姿勢を強く出してきたということが支持された第一の要因かと思っています。それと、これまでの経歴の関係で、中央とのパイプに対する期待があったのではないかと思います。復興を実現してくれるためには、中央とのつながりは当然必要なことだと思いますし、市民の皆さんが求める声もありました」
相次ぐ現職市長落選の背景には、県内に渦巻く市民の怒髪天を衝〈つ〉く怒りがあったことは間違いない。13年前から福島県田村市に住み、原発から21キロ地点に自宅がある「福島で生きる!」(洋泉社)の著者・山本一典氏はこう解説する。
「3大都市は、いわき市の一部を除くと全て30キロ圏外なので、ほとんど賠償を受けていません。そういう意味でも不満が溜まり、そのはけ口がこういう結果になったのだと思います」
今回の選挙結果を受け、小誌が行った緊急アンケートでもこんな肉声が寄せられた。
「30キロ圏内ばかりを被災対象にして賠償しているが、圏外でも放射能の線量が高いのに政府も県も市も知らんぷりしている。賠償の不平等で30キロ圏外の人々は怒っている」(50代男性)
前出・山本氏が続ける。
「こういう田舎は皆、仲よく暮らしていたのが、20キロ圏、30キロ圏など、いろんな線引きをされました。そのことで、補償の問題も進まず、時間がたてばたつほど地域と心の分断が広がっています」
“分断”は県民の声にも表れている。40代の女性はこう漏らす。
「避難者が流入したことで町が混雑しており、道路や商業施設・病院機能に多大な支障が出て麻痺しています。いわゆる第二の町構想や、避難地域を復興させて帰還できるようにすることなどで、避難されている方々に長期間安心して住める環境を整え、急激な過度の人口増加のひずみを一刻も早く解消すべきです」
のどかな田園の情景は奪われ、殺伐とした気持ちを持たざるをえない状況なのである。